対応に右往左往し、手探りの日々だった
佐々木常夫さん
日経DUAL編集部 自閉症のご長男について伺います。色々とご苦労もあったかと思いますが、そうした状況から逃げたくなることはありませんでしたか?
佐々木常夫さん(以下、敬称略) 長男は知的には問題ありませんが社会性に乏しく、学校ではトラブルが多発しました。対応に右往左往し、手探りの日々ではありましたが、息子のために何ができるかをいつも念頭に置いていました。
例えば、長男が中学校でいじめに遭い、不登校になったことがありました。担任の先生にクラスの生徒達と直接話をさせてほしいと頼みましたが断られました。仕方がないので、クラスのリーダー格の子に頼んで、クラスメートをわが家に集めてもらったんです。
結局半分くらいしか来ませんでしたが、その子達に長男の障がいについて説明し、世の中にはハンディーキャップを持った人が大勢いて、健常な子ども達はサポートする義務があるということを話したのです。
「知行合一」を肝に銘じる
佐々木 子ども達を集めて話をしたことが一つのきっかけとなり、長男に対するいじめはひとまず収まったように見えましたが、実際にはそう簡単には無くなりません。障がいの有る無しにかかわらず、いくら言ってもいじめが無くならない場合はある。そういうときは「無理に学校に行かなくてもいい」と言うこともありました。本人は十分に頑張っているのだから、それ以上頑張る必要はない。つらいことがあるなら、逃げたっていいのです。状況に応じて判断すればいいと思う。
何より大切なのは、本人の置かれている状況を正しく理解するということです。難しいことではあるでしょうが、色々と手を尽くせば分かることです。そして、できることは全部する。子どもが苦境に立っているのだから助けてあげたいという気持ちはみんな同じでしょう。その気持ちを行動に移すのです。知識があるだけではだめ。行動しなくてはいけない。吉田松陰が指針としていた「知行合一」(知識は実践を伴ってこそ意味がある)ですね。