ローンを借りる人の3つの悩みどころ
住宅購入の相談に訪れる方の悩みは、整理をするとこの3つに分類されます。
1 買えるかどうか?(住宅ローンを借りられるか)
2 ローンを借りることはできても返せるのか?(リスク)
3 買うべきか?(ライフプラン)
まず「買えるかどうか?」は、ローンの審査に通るかです。住宅ローンを組まずに現金で買う人は少数派ですから、家を買うことは住宅ローンを組むこととほぼ同じ意味です。家を買えるかどうかはここで決まります。この部分で心配をしないといけない方は、転職したばかりとか、過去にカードローンの返済を延滞した方などです。ただ、1のポイントが問題になる方はあまりいません。
返済比率といって、年収に占める住宅ローンの返済額の割合は目安となる上限はありますが、よっぽど無茶な予算でない限り収入が原因で希望する額のローンを組めないことはありません。少なくとも過去の相談でそういう方は1人もいませんでした。
一方、ほぼ全ての方が心配しているのは、2の「借りることはできても返せるのか?」という点です。「何十年も先までローンを返済し続けることはできるのか?」「教育費と両立はできるのか?」「ローンを完済して老後資金もしっかりためることはできるのか?」という不安です。これはリスクの話といえます。お金を払って相談に訪れる方が心配していることはこの一点に集中しています。ここは、家を買う人のローンの借り入れ額、借り入れ期間、金利の種類などが影響します。
相談に来る方のなかには、契約直前の方もいます。買うと決めたはいいけど、直前になって本当に買っても大丈夫なのか不安を感じて慌てて相談に来た、という方は少なくありません。相談をしないよりはいいと思いますが、もっと早い段階で、できれば購入を思い立った段階で来てくれたらいいのにといつも思ってしまいます。適正な予算が分からない段階で購入プランを決めてしまうことにはリスクが伴うからです。
そして3つ目が「買うべきか?」というライフプランの話です。「ライフプランとの整合性」と書くと硬い表現になりますが「今、この場所に、この予算で家を買うことが本当に楽しい生活を送るために正しい判断なのか」ということです。
購入に至る経緯を聞いてみると、(結果的に正しいかどうかは別にして)子育ての環境や将来の住み替え・買い替えまで考慮してかなり綿密に計画を立てている方もいれば、そろそろ今住んでいるアパートの契約が更新なのでそれに合わせて、あるいは家賃がもったいないから、といった、正直言ってもう少し慎重に考えてほしいと思う理由を挙げる方もいます。
全てのご家庭には、そのご家庭なりのライフプランがあるはずですが、そういったライフプランを考慮していない買い方は危険であると考えてください。
考えるべきはリスクとライフプラン
この本では「リスクとライフプランを重視して住宅購入やローン返済を考えましょう」と何度もアドバイスします。あまりなじみのない言葉かもしれませんので、ここで説明しておきたいと思います。
住宅ローンを組んで家を買うと、将来収入が減ったときに返済ができなくなるかもしれません。これがリスクです。将来日本は人口が減って家が余るから買う必要なんてない、という人もいます。それでも多くの人は家を買いたいと思っています。やはり家を買うことで「楽しい生活」を送りたいからです。ただ、住宅ローンの返済ができなくなってしまえば楽しい生活が送れるはずもありません。楽しい生活は安定した返済が前提になります。
ライフプランを重視してくださいというアドバイスは「何のために家を買うのか慎重に考えてほしい」という意味です。もちろん人によって目的は違うと思いますが、「楽しい生活を送るため」という方向は誰でも同じはずです。
つまり、リスクとライフプランを重視して家を買いましょう、というアドバイスの意味は「楽しい生活、しあわせな生活を送るために家を買ってください」という、あまりに当たり前で、でも一番大切なアドバイスをしている……と考えてください。
楽しくない、しあわせではない状況とは、住宅ローンが家計を圧迫して返済のためだけに生活をしているような状況や、後になって借り入れ額が多過ぎると分かり、お子さまの進学やご自身の趣味などに金銭的な制限が加わってしまう状況です。
こういった状況を避けるためのテクニックや考え方は従来の「常識」とは大きく異なります。「年収の5倍が予算の目安」「頭金は2割以上入れるべき」「繰り上げ返済は早いほうがいい」「返済額は収入の35%まで」……どれも一回くらいは聞いたことがあると思いますが、現在では全く役に立ちません。私が受けた相談事例を紹介しながら、従来の「常識」とは異なるアドバイスをこの本でお伝えしたいと思います。
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『住宅ローンのしあわせな借り方、返し方』
(中嶋よしふみ著/日経BP社)
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(日経DUAL編集部)