「顧客のために」に「経営とはなんぞや」が加わり、最初は戸惑った
【セミナーに参加した経営者から寄せられた質問】
カルビー・中日本事業本部・本部長の福山知子さん
福山知子さん(以下、福山) 私はそれまでマーケティングの部署におりましたので、工場経営や財務、営業といった経験はありませんでした。マーケティングの部長から本部長になったときは、やることも周りから言われることも何もかも以前と変わり、最初はどうすればよいか分からずに戸惑ってばかりでした。マーケティング部時代は「顧客のために」「顧客の立場で」という視点に集中して業務を行っていましたが、役員になってからはそこに「経営とはなんぞや」という課題がプラスされました。
当時本部長に就任した女性が3人おりましたが、私だけ地域的に離れていたために、横のつながりをつくったり相談したりすることができませんでした。そこで、会長の松本が関西圏に来たついでなどに「ちょっと時間取れる?」と声をかけてもらい、1時間程度話をしてアドバイスをもらいました。
その当時から、松本から「それではダメだ」などと言われたことは一度もありません。その代わり、経営者としての軸である「目線を上げないといけないよ」といったヒントはもらっています。そうしたことを繰り返しながら、経営の手応えを少しずつ実感できるようになってきました。
様々な属性の社員が共に未来を考えるためには、「ダイバーシティー枠」が必要
カルビー・コーポレートコミュニケーション本部・本部長の後藤綾子さん
後藤綾子さん(以下、後藤) 私は本社での広報業務に携わっておりますので、松本や社長の伊藤と話す機会がたくさんあります。日々の取材の中で2人の考えを聞くことも多く、福山ほどまだたくさんの部下もいないので、以前との違いに悩んだり戸惑ったりすることもそれほど多くはありません。
社内の雰囲気の変化についてお伝えしますと、当社では年に2回ほど「未来を考えた成長戦略ワークショップ」を行っています。幹部が約50人集まって討論するのですが、参加メンバーはどうしても男性が中心になっていました。そこでダイバーシティー枠を設け、若手や組合代表、女性などを10人ほど交ぜるようにしました。
そうしてからは、「そもそも私達は何のために話し合っているのでしたか?」といった率直な質問が若い女性社員から出てきたりします。それは実はみんなが心の中で思っていたけれど、言えなかったような貴重な意見です。周りに同じ若手が何人かいるので素朴な質問も許される雰囲気で、「そうだ、何のための話し合いだったっけ?」と初心に帰るきっかけになります。やはり属性の異なる人を“複数”連れてくることがポイントですね。未来の戦略を考えるのが目的ですので、多様な意見はとても貴重だと思います。