パパ編の「ぎゅっと抱きしめる」は大ブーイングポイントだよね (青野)
陶山大介さん。IT企業企画職。2015年1月より半年間の育休を取得し、7月に復帰した。育休中は、料理をはじめ家事の大半を担当した。子どもは2歳、生後9カ月の二人
羽生祥子(日経DUAL編集長)(以下、羽生と略記) 育児と家事の夫婦間分担については、まだDUALでも正面から取り上げてきていませんでした。今回は、皆さんの本音をお聞きしたいと思います。この企画の発端は、サイボウズさんのワークスタイルムービーでした。SNSで炎上しましたよね。
大槻幸夫さん(サイボウズCM制作担当者)(以下、大槻と略記) “炎上”ではなくて、“話題になった”と認識しています(笑)。サイボウズが何か誤りを犯したわけでは無いですから。
界外(かいげ)亜由美さん(以下、界外と略記) 1本目の『大丈夫』で感情を抑えていた人が、2本目の『パパにしかできないこと』で一気に爆発したという印象があります。もう黙っていられなかった(笑)。
小田舞子(日経DUAL)(以下、小田と略記) では、ムービーの感想も語っていただきながらの自己紹介を、今年育休を取得されたばかりの陶山さんからどうぞ。
陶山(すやま)大介さん(以下、陶山と略記) 私はIT企業で企画の仕事をしています。サイボウズさんが進めている“ワークスタイル改革”には共感を持っていて、今回の座談会に参加させていただきました。
プライベートでは2児の父親です。2人目の出産をきっかけに半年間の育児休業を取ると決めて、お休みをいただきました。おかげでその間、妻や子ども達とバタバタしながらも楽しく過ごせました。
ムービーに関しては、登場人物と同じように小さい子どもがいて、かつ共働きであるという点で自分自身と重ねて見ていました。特に気になったのは『パパにしかできないこと』で炎上した部分。
自分を振り返ったとき、あのムービーで「ママにしかできない」と語られていることの大部分はできていると思います。ただ、それでも「ママと同じように子どもと向き合えているか」というと、まだまだ足りないところはある。あそこには出てこなかったけれど、ママにしかできないことを父親自身がつくってしまっているのかもしれないと思いました。とはいえ「ママと勝負して勝てるか」と言われるとそれも難しい。
うちの場合、僕も妻もフルタイム勤務の正社員です。妻は完全に「残業なし」のスタイルで会社と合意を取ったうえで働いています。僕もなるべく早く帰ろうと心がけていますが、時には残業せざるを得ないこともあって、時間的に妻に負担をかけてしまっているんです。そういう意味で『パパにしかできないこと』の最後に出てきた、「抱っこしてあげられることなんだよ」は、結構響きました。
一同 ふーーーん。
青野慶久さん(サイボウズ代表取締役社長)(以下、青野と略記) あそこはね、大ブーイングポイントね。「ふーん」てね(笑)。
一同 (笑)
陶山 いや、家事や育児を一切やらずに「いつもお疲れさま」ってハグだけしても「お前、何やってんだ?」ってなると思うんです。ただ、僕自身、できる限り家事・育児を半分ずつ分担できるようにしたいと思ってはいるのですが、現状ではどうしても奥さんに負担をかけてしまうことが多い。もちろん、現状に甘えてしまってはいけないのですが、今すぐに状況を劇的に改善できるかというと、それもなかなか難しい。
そこで自分には何ができるかというと、一歩引いて「そうか、自分には見えていないところで奥さんは大変な思いをしているんだ」と理解してあげるのが大事かなと思うんです。仕事と家事・育児の両立って、女性はもちろん、男性にとっても結構大変です。お互いに毎日色々なストレスと闘わなくてはならないので、ささいなことで擦れ違いが起こったり、時にはけんかになったりしますよね。そんなときに、自分は一時的な感情的に流されずに奥さんの気持ちを受け止めてあげる。それが、あの『パパにしかできないこと』の「抱っこ」なのかなと思ったんですよね。
そういう意味で、自分の中では腹落ちしたんですけど、その後の炎上具合を見て、「あれ? 何だろうこれ」という感じでした(笑)。
一同 あはは(女性陣から笑いが起こる)。