自分が「大事だ」と思った箇所に気持ちをこめて歌うことで、歌が俄然、輝き出す
生き生きとミニ・ミュージカルを演じる女の子チーム
歌やダンス、芝居が融合した総合芸術、ミュージカルを「誰でも体験できる」ワークショップがあるのをご存じだろうか。1977年に作曲家・いずみたくが創設したミュージカルカンパニー イッツフォーリーズでは、年に数回、子どもも大人も参加できるワークショップを開催している。その日初めて出会った人たちが、劇団員たちのサポートを受けつつ90分でミニ・ミュージカルを作るというこのイベント、とりわけ子どもたちが「新しい自分に出会える場」として大好評だという。どんな内容なのか、5歳の娘と親子で参加してみた。
このワークショップ「したまちでミュージカるぅ?」の会場は、台東区蔵前にある劇団の稽古場。この日は5名の劇団員のサポートの下、幼稚園児から小学生までの子どもたち10名ほどと、その保護者たちが参加した。めいめい、自分のニックネーム(あるいは下の名前)の名札を胸につけ、まずは名前を呼び合うゲームで初対面同士、ちょっと距離を縮める。
続いて、劇団員たちが貼りだした『手のひらを太陽に』の歌詞を見ながら、テープの伴奏に合わせてみんなで歌ってみる(課題曲はその日の参加者の年齢や男女比などをみて決めるという)。
プロ劇団ならではの作りこんだサウンドに乗せられ、既に子どもたちはノリノリだが、一度歌うと、劇団員の“けいさん”こと中山圭さんが尋ねた。「この歌詞を読んでみよう。この中で、一番言いたいことって何だと思う?」 うーん、と一瞬考えてから、「まっ赤に流れるぼくの血しお」「みんなみんなともだちなんだ!」などと子どもたちが答える。一つ一つに「そうだね」と頷いて受け止めるけいさん。
課題曲の歌詞を「もう一度読んでみよう」と提案する劇団員の中山圭さん
国語の授業ならこのあと“正解発表”があるが、よねさんは全員の答えを肯定して、「では、自分が一番大事だと思ったところを、特に大事に歌ってみよう」と、もう一度テープをかけた。すると、それまで単に“元気な歌唱”だったのが、みるみるうちに“生き生きとした歌唱”に変化。筆者も歌いながら、魔法を見ているような気分になった。
続いてはこの歌の振り付け練習。手のひらを上に掲げたり、ミミズの動きをしたりと歌詞に即したシンプルな振りだが、“キメ”ポーズがあることでかっこよく見え、子どもたちもすぐにマスターしていた。
『手のひらを太陽に』の振付をすぐに覚える子どもたち