制度を設けるだけでなく、「インフォーマル」な施策が重要
東レ経営研究所の塚越学さん
セミナーは東レ経営研究所でダイバーシティ&ワークライフバランス推進を手がけるシニアコンサルタントであり、NPO法人ファザーリング・ジャパンの理事も務める塚越学さんの講演からスタート。
下図の通り、企業を取り巻く環境の変化について、従来は主に男性・正社員・終身雇用社員・時間制約なし社員で構成される「ピラミッド型」組織が一般的であったのに対し、現在また今後は、多様な雇用形態や働き方の社員が増加する「フラット型」組織へと移行するという現実が示されました。
今後、現場で求められるマネジメントは、多様な人材を活かす「ダイバーシティ・マネジメント」。そして、仕事と生活の両面において多様な価値観を受容できる職場をつくる「ワークライフ・マネジメント」。
その実現のために欠かせない要素として、下図にある通りの3つが挙げられました。
上図のうち「2階」部分、つまり「制度」面は整えられているものの、「1階」と「土台」づくりが追い付いていない企業が多いと、塚越さんは指摘します。
「『人材劣化企業』にありがちなパターンは、フォーマル施策である『2階』のみに力を注ぎ、一方的な啓発ばかりしている。一方、『先進モチベート企業』では現場を巻き込んでインフォーマルな施策を複数展開し、『1階』と『土台』を固めています」(塚越さん)
スーパー人事とダメ人事の差は「データ収集力」にあり
そして、「スーパー人事」と「ダメ人事」の差は「データを収集・活用できているか」という点にあるといいます。
「スーパー人事は自社の現状データの収集・分析ができています。例えば、社内の人口構成推移、制度利用比率、共働き率、育休希望率をはじめ、上司と部下間のコミュニケーションギャップなどの調査も行い、現状を把握したうえで施策を推進しています。しかし、ダメ人事の場合、いつまでも自己体験や肌感覚を頼りにし、データに向き合わない傾向が見られます」(塚越さん)
このほか、実際のダイバーシティ・マネジメントに必要な4つの改革要素として「マネジメントのあり方」「働き方」「人材育成のあり方」「評価のあり方」などが紹介されました。