阪部 エグゼクティブエリートとしてグローバルにご活躍されてきた久野さんが、ご両親からどんな影響を受けて育ってこられたのか、とても興味があります。ご自身の子ども時代のことを少しお聞かせ願えますか?
久野正人さん(以下、敬称略) 私は福岡出身です。子ども時代は、都市部にさえ、まだ戦後の匂いが残っていました。地方都市では、よりその色が濃かったですね。混沌としていたし、「いろんな人がいたな」という感じで、まさにダイバーシティーそのものだったと記憶しています。
父親は銀行員でいわゆる九州男児を地で行くような男でした。子どものころはぜいたくこそしませんでしたが、比較的裕福な環境で育てられたと思います。しかしその後、父親は銀行を辞め、共同経営を始めた会社を倒産させてしまいます。私が大学生のころでした。
当時の私は外交官になりたくて本気で勉強していましたが、家庭の事情で諦めざるを得なかった。その頓挫は精神的にきつかったですね。ある意味、自分にとっての最初の修羅場だったかもしれません。
子育て中の今、「ご自分の未来に焦点を当てていますか?」
株式会社エム・シー・ジー代表取締役・久野正人さん
阪部 お父様もまた久野さんと同じように仕事人間であり、いつも忙しくしていらしたんですね。最近は共働き夫婦が多く、子育てや家事を妻と分担する、いわゆる「イクメン」が注目されています。こうしたイクメン達に久野さんから何かアドバイスはありますか?
久野 子育てに関しては、妻に任せきりでしたのでDUALの読者に対してアドバイスできる立場だとは思っていません。ただ、少し視点を変えてお尋ねしたいことがあります。
父親であり母親である自分達を“キャッシュマシーン”という側面から見た場合、自分達に今どれだけの価値をつけられるでしょうか?
言い方を変えると、皆さんは現状どのくらい「自己投資」をしているでしょうか? 夫であれば妻に、妻であれば夫に「自分への投資」はどの程度、許可しますか? 金銭的な意味ばかりではなく、時間を含めた自己投資です。
親としてはつい、子どもに一番お金をかけてしまいがちですが、考えてみれば、子どもの教育費もすべてキャッシュマシーン(親の収入)から捻出されるわけですから、稼ぎ手として価値を上げ、ポジションなり給与なりを上げていくためには自己投資が必要です。子どもにいい教育をさせたいと願えば、やはりいい機会を与えるにも、塾に通わせるにもお金がかかります。