“グローバル父さん”の背中を見て、息子はグローバルに育つのか?
株式会社エム・シー・ジー代表取締役・久野正人さん
阪部 久野さんのようなグローバル父さんの背中を見て育った息子さん達もまた、グローバル人材に成長されているのでしょうか?
久野さん(以下、敬称略) 息子は二人おります。長男はブラジル生まれですが、その後帰国し、中学校は日本でいわゆる“お受験”をして中高一貫教育の私立校に通いました。東京大学工学部に進学し、卒業後は建築家として大手設計会社で働いています。
次男は本人の希望により“お受験”はナシで、日本の公立校を選びました。その後、スイスの高校、イギリスのカレッジでの寮生活を経て、現在は上智大学・国際教養学部(授業はすべて英語で行われる)に通っています。
阪部 ブラジル生まれのご長男がドメスティックな選択をされ、二男さんはインターナショナルな選択をされたのは大変興味深いですね。やはりご本人の個性や資質によるところが大きいですか?
久野 二人とも高校時代に海外のサマースクールを経験させたのですが、適応の仕方が対極でしたね。寮生活になじめなかった長男は週末ごとに、現地在住の親戚の家に逃避していたようですが、二男は友達をいっぱいつくって、それなりに楽しんでいた。
二男の場合は「兄さんとは違った道を選択したい」という気持ちもあったこともありますが、日本の教育制度に適応しなかったことが大きいです。学業の成績は悪くなくても“内申”が芳しくなかった。制服が嫌いで自分の好みの服しか着ません。“わが家のレディー・ガガ”と呼ばれていたくらいですから……。お察しください(笑)。
ただ、イギリスのカレッジに通っていた間は、かなりの修羅場を経験したみたいですよ。50人の寮生活で48人が中国人、残りの2人が日本人の自分とアラブ人。そんな環境の中で「尖閣問題をどう思うか」「南京大虐殺をどう思うか」と問い詰められたこともあったようです。でも、そこで終わらせはしなかった。
中国の留学生は裕福な家庭の子どもが多く、両親が送ってくる食材のほとんどが「MADE IN JAPAN」だそうなんです。しかも、老舗の高級食材だったりする。わが家が近所のスーパーで買って荷造りして送る食材よりもはるかにいい日本食材が寮にはそろっているそうなんです。でも、彼らは日本食の料理の仕方が分からない。
ボーディングスクール時代から料理が得意だった息子はコック役を買って出て、彼らに日本料理を作ってあげることで自分のポジションを獲得したそうです。彼の格付けが上がったわけですよ。かなりつらい思いもしたのだろうと思いますが、そこでの経験が息子を成長させたのは間違いない。