敷津小は、子どものスマホ普及率が低い。今のところ、ネットいじめのトラブルは浮上していないが、いつあってもおかしくはない。中学の先生からは、LINEのトラブルを多く聞く。しかし、指導する側の教師や管理職は、スマホを使いこなしている人と「LINEなんか怖くてできない」と拒否反応を示す人に分かれる。
私はパソコンやネットの発達とともに、20代・30代を過ごしてきた団塊ジュニア世代だ。校長になる前は広報関連の会社を自営していたので、ネットの普及とともにビジネスをしてきた。抵抗感はない。
だから、新しいツールがトラブルになるたびに起こる「○○なんて無くしてしまえ」という禁止論には賛同できない。便利なツールは一気に普及する。ネットもLINEも既に「インフラ」と捉えている。インフラである以上、無くすのは難しい。子ども達は、大人に見えないように使うだけのことだ。私も、家族とのやり取りに活用しているので、無くなると困る。
「いじめを止めるLINEスタンプ」を作ってみよう!
昨年の冬、かつてお世話になっていたコワーキングスペースで「LINEスタンプクリエイター講座」があった。夜の時間帯なので、仕事帰りに寄れる。手描きの絵がスタンプになるって面白い、と参加した。
6年生男子が描いたイラストを、本人と保護者の許可をもらって持っていく。鉛筆で走り書きの落書きを、スマホで撮影してパソコンに送る。加工ソフトで色とコメントをつけたら、あっという間にスタンプができた。ゆるく愛嬌のあるイラストで、ふふっと笑える。そのとき、思った。
卒業生が、味のあるイラストを練習用にたくさん描いてくれた。子どもの自由なイラストに、可能性を感じる。公募でどんな作品が集まるか、楽しみにしている。
「いじめ防止のスタンプを、子ども達自身が作るのはどうだろう?」
この作り方なら、手描きイラストでも参加できる。子ども達は、「どんなスタンプがいいかな」と考えるときに、今までの会話を思い浮かべるだろう。嫌なムードの会話が続いた時、謝るきっかけが欲しいとき、自分が送るべき言葉やスタンプは、どんなものだろう? 話題を変えたり、クスッと笑わせて空気を変えたり、心地よいコミュニケーションに引き戻すには、どうすればいいだろう?
スタンプの図柄を考えることで、日ごろの使い方や会話を振り返ることができる。
そこで、漫画家である講師の方やコワーキングスペースの代表に相談し、「LINEいじめを防ぐスタンプ公募」の実施に至った(締め切りは10月20日。「LINE いじめ 防止 スタンプ」で検索)。
できたスタンプを無料で配付するのが理想だが、スポンサーが100万円以上支払わなければできない。しかし、けっして営利目的ではない。そこでスタンプの売り上げから経費を除いて、いじめ防止に取り組む団体に寄付することにした。
「いじめ防止のLINEスタンプを公募します」
ネットニュースで紹介されると、ネガティブコメントが続いた。「そんなものでいじめは無くならない」「LINEを規制しろ」「ズレてる」……。
もちろん「LINEの規制」「機能制限」は必要だ。しかし、それでは、システム変更を待つことしかできない。今、目の前にある課題に対応するには、ユーザーや教育関係者が動かなければ変わらない。仮に、LINEを規制しても別のツールが現れるだけだ。
だから、「LINEいじめ」というよりは「いじめそのもの」をやめる策を練って、根本解決に近づけたい。