時短社員の評価に悩む企業は、一般社員の評価でも悩んでいる
三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社・川島高之社長
日経DUAL編集部 最近、多くの企業の方々から時短社員の人事評価で悩んでいるという話を伺う機会が増えています。時短社員の評価について、川島社長はどのようにお考えでしょうか?
川島社長(以下、敬称略) 時短社員の評価に悩んでいらっしゃる企業は、恐らく一般社員の評価でも悩んでいらっしゃるのではないでしょうか? 一般社員の評価基準が明確であれば、時短勤務中の社員を評価する際にも、特段悩むことはないのではないか。これが私の実感です。
実は、人事評価制度の曖昧さは日本企業の良い面でもあります。欧米企業のように「ここまでやったらA評価。ここまでしかできなかったらB評価」としてしまうと、個人主義・成果主義に走り過ぎ、チームで助け合う日本的な良さが失われてしまいます。ですから、良い面が生きる曖昧さは多少あってもいいとは思います。しかし、それにしても現状の日本企業の評価制度はあまりにも曖昧な場合が多いですね。
―― なるほど。一般社員の評価基準が曖昧であるなかで、時短勤務社員が増え、どう評価すればいいのか分からなくなっている企業が多い、ということでしょうか。
川島 そうではないでしょうか。私は経営者になってから、日本の良さが生きる曖昧さと、欧米の個人主義・成果主義の中間を狙うために試行錯誤を続けてきました。
日本式に寄り過ぎると、実力のある人ほど不満を抱えて、モチベーションが下がったり、やめたりしてしまいます。また、実力のない人は、その曖昧さにぶら下がってしまう場合が多い。
人事評価が曖昧過ぎると、カバン持ちの人やイエスマンが出世しやすくなるでしょう。そして、出世して幹部になったイエスマン達は、「それまでの曖昧な人事制度を変えよう」というインセンティブを持っていませんから、その結果、旧態依然とした「曖昧な制度」が続いてしまっているというのが、多くの日本企業の現状ではないでしょうか?
―― そのような状況であれば、“時短勤務をしながらも仕事で成果を上げた人”はなかなか評価されないかもしれませんね。さて、御社では現在、時短勤務中の社員の方はいらっしゃるのでしょうか?
川島 フレックス勤務制を導入しているため、定時よりも早出・早帰をし、絶対に残業ができないワーママや、母親の入院で急に半日出勤が続く社員など、時短勤務・休暇取得・早退せざるを得ない社員が多くいます。そのような「制約社員」がいるという前提で、働き方改革を行い、人事評価制度を作っているのです。