洗濯機と冷蔵庫は女性向けの技術革新でしたが、携帯電話は、男女関係なく導入された。しかも、効率性以上のものをもたらしました。
フィンランドの携帯電話機メーカー、ノキアは当初、携帯電話により生活がいかに便利になるのかをアピールしました。しかし後には、より付加価値の高いものとして、宣伝するようになります。携帯電話は単に話をするツールではなく、コミュニケーションなど、より多くを生み出すものだったからです。ロレックスの時計も、最初は「仕事上便利なツール」として宣伝されましたが、後に付加価値が強調されるようになった。それと似ています。
また、携帯電話は、男女により捉え方が異なりました。男性は、携帯電話を手に入れることで、より自由になれると考えた。しかし女性にとっては違いました。技術というのはジェンダーと切り離せない。歴史上、女性は、技術に対して効率性や実用性を求めてきた。対して男性は、技術を、よりエンターテインメント性の高いものとして捉えてきたといえるでしょう。
ミカ・パンツァーさん:ヘルシンキ大学特任教授、フィンランド消費者研究所所長。消費者調査、デザインや技術研究、経済政策のレトリック、食品や未来への研究、システム調査など多岐にわたり記事を執筆し、フィンランド政府およびフィンランド科学諮問委員会から表彰されている。著書に、“Everyday life: The dynamics of social practice ”(共著:エリザベス・ショーブ、マット・ワトソン、発行:SAGA社、2012年)など。“Future home – inventing needs for domestic appliances”(Otava社、2000年)は、広く多くの大学で利用されている
パーティーの後は一週間かけて皿洗い
最後に、家事に関する質疑応答です。パンツァー氏は、「片付けが大変」という参加者の悩みに対し、北欧で大切にされている「ある価値観」を語ります。フィンランドセンター所長のメリヤ・カルッピネンさんの声も交えて紹介します。
メリヤさんは、仕事をリタイアした夫をフィンランドから呼び寄せ、日本で一緒に暮らしている。現在は夫が家事の担当
参加者 食器洗いが嫌いです。後片付けのことを考えて料理まで嫌になるほど。
カルッピネン 日本食は使う皿の数が多くてフィンランドよりも大変そう。でも、食べてからすぐ洗わないとダメ? 私はパーティーも好きで、そのときは食器をたくさん使うけど、すぐに洗おうとはしない。一週間かけてゆっくり洗いますよ。パーティーの後はみんな疲れているんだから、それでいいじゃない。
参加者 一週間はさすがにちょっと(笑)。