「お魚さんはいたい?」生き物への感謝を学ぶ食育
「かわいそう……」「あ、ひれがあるよ」「いたいのかな?」
屋上で始まったぶりの解体ショー。70cm以上ありそうな大きなぶりを、近隣の商店街の魚屋さんが子ども達の前でさばいていく。
屋上に集まったのは、0~6歳児の全学年約70人の子ども達と保育士やスタッフ。さばいてる隣では、園長先生がBBQグリルに火をおこし、さばいたぶりを炙る準備をしている。子ども達は解体作業にくぎ付けだ。
「魚屋さんはここの商店街から来ました。このお魚は、みんなのために朝、築地から一番いいものを選んできました。見て、こんなに大きいんだよ」
そう言って魚屋のご主人は、子ども達の前でぶりを掲げてじっくり見せてあげるところから始まった。
内臓の部分もきちんと子ども達に全部見せて説明する。すべてをちゃんと知ってほしいという保育園の方針だ
鱗を落とし、頭を落とし、内臓を取るところもしっかり見せる。後で話を聞くと、「実はお店などで解体ショーをするときは、内臓は先に取っておくのが普通なんです。血も出てしまうし、見た目があまりよくないので」と教えてくれた。
しかし、この日は内臓を取るところも全部見せ、その内臓だけまた掲げて部位を子ども達に一つ一つ説明した。
最初は解体に怖がっていた子ども達も、一口食べ始めたら「おかわりはないの?」と口々に
「食育と一言で言うのは簡単ですが、食べることの大切さを伝えていきたいと思っています。スーパーで売られている切り身しか知らない子どもが多い中で、本物を見せてあげて、生きていたものをいただいていることを学んでほしいのです。人間が生きていくために作物や動物、魚などをいただかなくてはいけない。そうした食べ物を身近に感じて感謝して生きていってほしいんです」と、小野政志園長先生は話す。
解体ショーは今回が初めての試みだというが、秋にはさんまを焼いて子ども達が一人1匹ずつ食べられるさんま祭りなども行っている。
さばいたぶりを園長先生が焼いてから、子ども達に一切れずつ配る
解体が終わった後、年長の子ども達は魚屋さんに質問タイムだ。もう解体に怖いという子どもはいない。
「ぶりには歯があるの?」「なんで歯があるの?」「サメにも歯があるの?」「これは青い魚? 銀色の魚?」
次々と質問が飛び、一つ一つ魚屋さんが答えてくれると子ども達は目を丸くして聞き入る。
「もう怖くない。魚さんにありがとうって言いたい。魚を食べたらぼくらの強い骨になるんだ」。一人の男の子がつぶやいた。