1社のクライアントを社員2人で受け持つ

重松 制度というと、やや大げさに感じるのですが、「ペア制度」として形になってきたのは、3年ぐらい前からです。主婦社員の中には夕方4時半に帰る方が多いので、4時半以後の仕事をサポートする人が必要になります。弊社の場合、基本的には周りの社員が主婦社員の仕事を引き継いで行うようになりました。つまり、考えて仕組みを作ったというよりも、現場がそうやって柔軟に対応するしかなかったのです。

 ペア制度とは、例えば、1社のクライアントを社員1人が担当するのではなく、ペアを組んで対応する仕組みです。つまり、Aという旅館をメーンに担当しつつ、Bという旅館もサブで担当するというように、複数人で受け持つようにすることです。

 このようにペア制度で仕事を進めていくうちに、決められた期日までに業務を終わらせられれば、担当を分担してやることに問題はないことが分かりました。早く帰るスタッフ全員がペア制度を利用しているわけではなく、個性に合わせて、さじ加減を考えています。

―― 一般的には、仕事を属人化させてしまう(ある社員に特定の仕事を任せるため、その社員がいないと仕事が回らなくなる)ケースが多いと思いますが、ペア制度は「仕事に対して人を付けていく」という考え方なのですね。

重松 そうです。もちろん、実際は人に仕事を付けることもあります。“その社員にしかできない仕事”というものもありますから。「人に付けるタイプの仕事と、そうでない仕事を分ける」という考え方が大切だと思っています。

 例えば、施設やお客様の課題と向き合ううちに、お客様との信頼関係が生まれ、特定のスタッフにしかできない仕事が出てきます。そうすると、メーンの担当として仕事を務めるのですが、そのスタッフが担当しなくてもよい部分があればできる限り切り離して、まとめて処理したり、効率的にできる方法を考えたりと工夫しています。

―― 現在の社員は男性が2人、女性が3人で、女性は3人とも主婦だということですが、女性の帰宅後、男性陣が業務を引き継いでいるということでしょうか?

重松 おおむねその通りです。女性3人のうち、子どものいない1人は夕方6時まで働いています。弊社では、基本的には仕事は夕方6時まで。それより早く退社する主婦社員2人は、退社するタイミングで仕事が残っていた場合に、他の社員に引き継ぎをします。しかし、徐々に引き継ぎをしなくても済むように段取りするようになってきました。“新しい仕事のやり方”が見えてきて、会社として進化してきたなと感じています。

人事評価は、社員の努力と成果を見て柔軟に

―― ペア制度を導入すると、評価制度が複雑になると思うのですが、そこはどうされていますか?

重松 今のところ、私と取締役の岩澤で社員の努力と成果を評価していますが、厳密で固定的な評価制度はありません。今後どうするかは未定ですが、モチベーションにもつながりませんので、“ニンジンぶらさげ型”の評価制度はやりたくないと思います。

―― 誰がどんな仕事をしているのか、正確に把握できているからこそですね。社内で各社員が担当している仕事を丁寧に評価するために工夫されていることはありますか?