保育園と幼稚園のたくさんの違いを、ひとつずつ解消していった
日経DUAL羽生編集長 市立園をこども園に移行するための準備に、どのくらいかかりましたか?
平松以津子(ひらまつ・いつこ)氏 静岡市子ども未来局長。政策法務課長、保育課長、子ども未来課長、子ども未来部長など歴任し、2015年4月より現職。子ども・子育て支援新制度に向けた市の体制づくりや、市立幼稚園・保育園のこども園移行などを担当
平松以津子子ども未来局長(以下、敬称略) 1年くらいかかりました。方針を作るまでに、教育委員会の事務局と市長部局で何度も話し合いをしました。幼稚園からは「教育レベルが低下しないか」という懸念、保育園からは「家庭に寄り添った保育ができなくなるのでは」という懸念がありました。また保育園と幼稚園の先生は、仕事の仕方、時間の使い方も違うところが多くありました。
例えば、幼稚園の先生は、子どもが帰った後など、長い時間を研修に充ててきました。保育園は子どもが遅くまでいるので、保育園の先生はおのおのが必要な研修を隙間時間で効率良く行ってきました。また14時に帰る子と19時まで残る子がいると、それぞれの子にとって「よい保育」をする必要があります。保育園の子にとっての午睡の時間に、幼稚園の子は帰りの会をしなくてはならない。どうやって進めるのか? 調整すべきことは大小色々ありました。
でも「子どもにとって何がよいか」を考え実現していくことは、幼稚園・保育園両者の共通の願いでした。「子どものことを一番に考えてやっていこう」。専門家のアドバイスなども受け、先生達にまずこども園になる意義を納得してもらいました。こども園になれば、保育者にも子ども達にも、保護者にも葛藤が生じる。でもその葛藤こそが豊かな教育・保育につながる。互いの違いを認め合い、協力し合える未来の市民を育てるんだ、という。教育現場の人達は、合点すればものすごい勢いで動き出す。給料表の統合のための労使交渉なども必要でしたが、最後はうまくいきました。