日本人がポジティブ思考を苦手と感じる理由

 「サイコーの評価法」とは、何かの出来事を振り返るときに、良かったところを3つ、悪かったところを1つ、そして今後の改善策を1つ挙げるというものです。

 さて、この説明を聞いた時点で、「ふーん。ポジティブ思考のことか」と、しらけた人はいませんか? でも、ご安心ください。そもそもこのメソッドは、「ポジティブ思考になる」ことをむやみにお薦めするものではありません。なぜなら私は、日本人にとってポジティブ思考はあまり相性が良くないのでは、と感じているからです。そこには、長年のライフスタイルから培われた精神性が影響していると感じています。

 ポジティブ思考を強く推奨する西洋人はもともと狩猟民族で、明日、狩りに出かけて獲物を得ることができるかどうかはまさに運次第。あれこれ対策をしておいても、そのときになってみないとわかりません。だから「なるようになるさ」「きっとうまくいく」とポジティブに考えたほうが良い。そして、終わったことをくよくよ考えても仕方がない、と考えます。

 いっぽう日本人は農耕民族です。四季がある中、一年をかけて稲を育てないといけない。水を川から引いて利用したり、田植えや稲刈りもタイミングが大切、となると、集団社会に属し、周囲に目配りをしながら行動をしないといけません。また、ちょっとした天候の変化も敏感に感じ取り、「不安感」を活用して対策をし、工夫をする必要がある。失敗したらその都度反省し、次の不安に備える。そうすることで、「収穫量」という結果に大きな差が出るからです。

 このように考えると、日本人は「ネガティブ思考」=「不安感」を、生き抜く知恵として活用してきた民族です。だから、「悩んでもリターンに影響はない」と割り切った西洋人のポジティブ思考はどこかしっくりこないところがあります。ポジティブに考えないと、と言われると確かにそうだな、と思うのですが、心のどこかでは「そうかな? ポジティブだけでいいのか、ちゃんと不安に備えなくていいのか?」と疑問を感じる自分もいるのです。

 とはいえ、不安感だけにどっぷり漬かるのも問題です。特に今は日本全体を“疲労”と“うつっぽい空気”が漂っているような実感が私にはあります。どうしても物事をネガティブな視線で見るようになると「今日も明日もダメ、自分も何をやってもダメ」という思考に偏りがちです。

 だからこそ不安を「適正なサイズ」に小さくする必要がある。そこで、「サイコーの評価法」が必要になるのです。