本の読み聞かせの繰り返しで「メタ認知」力が高まる
日経DUAL編集部 第3回では、読み書きや算数について、親子でできる準備についてお話を伺いました。小学校に入学した後は、勉強が好きな子になってほしいと願う親も多いと思いますが、何か方法はあるのでしょうか?
親野さん(以下敬称略) 就学前から本に親しんでいる子どもは、小学校の勉強すべてにおいて苦労しなくて済みます。本に親しむことは、とても大事なことなのです。ですから就学前は、できるだけ読み聞かせをたくさんしてあげてほしいと思います。
お父さん、お母さんの膝に抱っこされながら、すてきな絵を眺めつつ、お話の世界に浸る。これだけでも、子どもは親の愛情を実感できます。幸せなんです。さらに、物語の世界の面白さにワクワク、ドキドキする。この2つの“心地よさ”がリンクして、「本の世界って素晴らしなあ」とか、「楽しいなあ」と感じ、本が好きになります。するとどんどん言葉も覚えて語彙が増えますし、自分で読書するようになる子どももいるでしょう。
また、読み聞かせをたくさんすることで、子どもにいい影響を与えることがあります。絵本の世界には登場人物の心理などが色々と描かれています。実はこれが非常に重要で、子どもは物語の世界から「こういうことを言われると嫌な気持ちがするんだ」とか、「こういうことをされるとうれしいね」といったことを感じるんです。
登場人物に共感したり同化したりし、リアルにその感情を受け止めながら読み進めるので、「こういうことをすると心配になるなあ。気を付けよう」「こういうことを言うと、嫌な気持ちになるから言わないようにしよう」など、相手を思いやったり、気遣ったりする気持ちが育ってくるんです。そうした積み重ねから、人の気持ちというものが分かる子どもになるし、逆に自分の気持ちも分かるようになってきます。「ああ、今私、嫌な気持ちになっているな」とか。自分の気持ちをある程度、客観視することができるようになる。これを、「メタ認知」といいます。
──本に親しんだ子どもほど、そのメタ認知が育つ、ということですか?
親野 そうです。自分を客観視できるようになるのです。例えば、今、コーヒーを飲んで「おいしい」と思う。これは一次元の認知です。それが「あ、今、私はコーヒーをおいしいと感じている」というふうに、一つ上からの目線で自分を認知できるのがメタ認知です。
このメタ認知が育ってくると、子どもでも「あ、私、今イライラしている」というふうに分かるようになります。大人でもそうですが、「あ、自分は今、ムカついた」と、メタ認知で分かっていると、怒りに飲み込まれることなくちょっとブレーキをかけることができる。そういった感覚が、小学校に入った子ども達にとっては大事になってくるのです。
メタ認知力のある子どもというのは、自分を自然にコントロールできるようになります。だから、怒りに飲み込まれないし、疲れているな、と分かってもちょっとだけ頑張れたりするなど、自分をコントロールする力が高まります。つまり、心の知能指数ともいわれるEQ力が高まるのです。その力が勉強でもすごく役立つようになるわけです。
写真:鈴木愛子