動物園は子どもの発見に任せ、大人が先回りしない
大人も子どもも笑顔になれる動物園。動物達が私たちの心を癒やしてくれる、おでかけスポットの定番です。ただ見て回るだけでも十分に楽しいのですが、せっかく行くなら子どもと一緒に楽しみながら学べる場としたいですよね。「大人が『よく予習して先回りしない』ことが子どもとの共通体験が築ける秘訣です」と語るのは、全国100以上の動物園を訪れている動物園ライターの森由民さんです。
トビを手に乗せている森さん。高知県高知市の「わんぱーくこうちアニマルランド」にて撮影
「私達大人は、つい『ほら、ゾウさんだよ』とか、ライオンに見入っている子どもに『写真撮るからこっち向いて』と言ってしまいがちです。しかし、その行為は子ども自らが気づく機会を奪うことになる」(森さん)。
それでは、どんな接し方がいいのでしょうか。
「動物園に行ったことがない乳幼児の場合、ライオンやゾウばかりでなく、ウサギもネズミもすべてが初めて見る動物。ならば、大事なのはまず『見せる』こと、子ども自身が気ままに注目したり目移りしたりするのを大切にしてあげることです。ウサギに熱中したり、ゴリラと見つめ合ったりできる場をつくりあげ、それを見守りサポートしてやるのが大人の役割ではないでしょうか」(森さん)
宮崎市フェニックス自然動物園のモグラ。人口のトンネルを通る姿が見られる
そのうえで、子どもと動物がつくり出した世界を切り取って、子ども達の思い出にしてあげることが大切だといいます。
「小学生になると、大人との会話で思考を深めることができます。まずはそこにいる動物をじっくり観察したうえで、『シマウマはなんでひづめで一本指なんだろう?』と質問してみましょう。答えはシマウマは野生では肉食動物に食べられる危険があり、そのほうが素早く走れるからです。こんなふうに、一つの発見から筋道を立てて考えるのは科学の基本的な思考方法。小学校中から高学年の子どもであれば、子ども自身に疑問が浮かんでくるのを促すのもいいと思います」(森さん)
また、子どもも大人もテンションが上がりがちな動物園。マナーにも気を付けたいところです。
「もとより静かにする必要はありませんが、動物への声を合わせた呼びかけを含め、過度の大声などは動物にも他の来園者にもストレスを与えてしまいます。例えば『夜行性動物』のコーナーに入る際、子どもたちに以下のような働きかけをしたらどうでしょうか。
ただ『静かにしてね』と言うのではなく『なぜそうするのか』を伝えてあげて、前準備をしっかりすれば、子ども達は息を潜めることも楽しくなって、静かに観察してくれます。
そして動物エリアを離れたら、休憩スペースなどで、今度は思いきり『発見』を語り合って盛り上がってください。『めりはり』が大事です」(森さん)
子ども達が楽しく熱中できるかは、大人の働きかけ次第。子ども達の自主的反応を大切にして、動物園を楽しんでみてはいかがでしょうか。