もちろん、主夫をしながら大好きな歌を歌っていく生活も幸せですが、僕は歌を歌いたいだけではありません。いくら好きな歌が歌えても、家族が幸せじゃなければ本末転倒です。僕は家族の笑顔が見える中で歌っていたい。そのためにも、生活の軸となる収入は大事だと考え、会社員として働くことを選択しました。

子どもたちの本音は「なんでお父さんは家にいるの?」

 また、子どもたちにとっては、「父親が家にいる」ということに違和感があったみたいです。僕に直接は言わないけれど、妻に「なんでお父さんは家にいるの?」「なんでお父さんが買い物に行くの?」とよく聞いていたみたいなんです。父親が家にいて、母親が働くというスタイルも、うちの子たちは気にしないのではとどこかで思っていましたが、それまでと生活が変わったことが不思議だったのでしょうね。「父が働く」ということが子どもたちにとっては“普通”だった。その普通が変わったことにすぐにはなじめなかったのかもしれません。子どもにとっては“普通であること”の心地良さというものもあるのかもしれないなと思いました。

 今の会社は、歌手活動に対する理解もあり、残業もそこまで多くなく、土日は休めます。家族との時間も持てます。妻も働いているので、家事はできるほうがやるようにして、ほぼ半分ずつ分担しています。料理だけは苦手なので妻にお任せですが、それ以外は何でもやります。

 歌手デビューして8年目。会社員との二足のわらじ生活はこれからも続ける予定です。

* 次回は、木山さんが39歳で歌手デビューした理由に迫ります。

(ライター/松田亜子、撮影/鈴木愛子)