子どもは遊びながら学び成長していく。遊びは育つための栄養素です。
私の使命は、子どもたちの想像力を豊かにすること
名作絵本約100作品を生み出した児童文学作家・中川李枝子さん
子どもと一緒に遊びながら、保育士に求められるのはいかに子どもを上手に遊ばせるかだと気づきました。体を動かすだけではありません。体と頭と心の3つをバランスよく使うのが「いい遊び」。そして、「いい遊び」をする子は想像力豊かだともわかりました。それならば、私の使命は想像力を豊かにすることです。
では、子どもの想像力を伸ばすにはどうすればいいか。絵本や物語です。ただし何でもいいわけではありません。私は自分の好きな本を選びました。
天谷先生の方針は「お金も時間も無駄づかいしない」。「若くて生活にゆとりがあるわけではない両親が、わが子のためによかれと思って預けてくれるのだから、保育料は一銭一厘無駄にできない」が口癖でした。でも、必要なお金は惜しまずに出してくれました。
そこでまず『岩波の子どもの本』シリーズを購入しました。私の愛読書『グリム童話集』(訳・金田鬼一/岩波文庫)も使いました。恐い話、おかしい話、かわいそうな話、明るい話……すべて間に合います。私の大好きな岩波少年文庫も役に立ちました。
広い原っぱがどんなに楽しくても、本はありません。本を読んでもらいたくて、子どもたちは休まずに来ました。そしていつのまにかおひるねの前を「本の時間」と名づけて、本を読んでと必ず催促するようになりました。先生のまわりに座って、絵本、お話、わらべうた、なぞなぞなど、ひとしきり楽しんでからおひるねするのです。保育園を続けた17年間、絵本やお話のきらいな子は1人もいませんでした。