毎日食べるお米がどう育っているのか、娘に感じてもらいたかった
「自分の口に入るものは、自身の目で確かめてもらえるのが一番。産地の空気も肌で感じてもらえたと思います。私たちも、食べてくれているみなさんと直接会える貴重な1日で、楽しかったです」という大野氏の閉会挨拶で、イベントは事故もなく無事終了。
希望者には、バケツに土と水を入れて苗を植えた「バケツ稲」のプレゼントがありました。イベントだけでは4回しか稲の育ちを見られない分、自宅でも毎日お米が実るまでを観察して楽しんでほしい、との農家の方の想いからです。バケツに苗を植えても同じように大きく育ち、バケツ1個分でお茶碗一杯分のお米ができるそうです。毎日食べているお米がどんなふうに日々成長していくのかを知ることで、「子どもがお米をたくさん食べるようになった」といった声もありました。
イベント終了後、参加者に参加した理由や感想を聞いたところ、次のような声が集まりました。
「このイベントのおかげで、生物や農業に興味を持つようになった子どももいる。イベント終了後に、子どもから手紙をもらうことも多い」と語る大野久男さん
ちば緑耕舎の大野さんは、産地交流に積極的に協力する理由について、次のように話します。
「有機栽培、減農栽培と、環境に配慮した農業を実践し続けて10年になります。自然環境を優先することで、田んぼにはドジョウや糸ミミズ、カエル、水路にはメダカ、それらをエサにするトンビ、しらさぎ、ヘビなどと生き物がたくさん増えました。生産だけを考えると、実は、生物が多ければ多いほど手間は増えるんです。例えば、薬を使わなくても病気にならない稲に育つよう、苗づくりの際、1週間ほどわざと水を与えず放置しておく、という手間をかけます。赤ちゃんの苗に、あえて負荷をかけることで強くなるんですね。
日々の心配事としては、モグラです。糸ミミズを食べにくるモグラが増えました。モグラは田んぼの中に穴を掘るから、知らぬ間に水田の水を流れ出してしまったり。苦労も多いですが、我々人間も自然の中の一部だと思って、がんばっています。
イベントをする一番の目的は、そういう自然の恵みと毎日食べているお米とのつながりを身近に感じでもらうこと。大人も子どもも、直接見て触れて肌で感じるのが一番正しいし、何よりもの学びだと思います。体験した子どもたちから感謝のお手紙をもらったり、これを機に小学校で生物クラブを作ったなんて聞いたり、嬉しい反響も頂いています。
日本は昔から、稲作文化のもとで暮らしを工夫してきました。もっともっとお米を食べてもらえると嬉しいですね」。
「作ること」と「食べること」の相互理解を深めること。
産地の生産者と一体となったこれらのパルシステムの取り組みは、その重要性を体感できるだけでなく、安心できる食材がどうやって組合員のもとへ届けられているのかを子どもと一緒に知ることができます。
パルシステムではこういったイベントを各地の産地で行っています。自然を感じ、食、環境、生き物がつながっていることを体感したくなったら、是非、参加してみて下さい。
(取材、文/平山ゆりの 写真/菊池くらげ)
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