大人向けの『グリム童話』で語彙を増やす
小学2年生のころ、私は父の本棚探険に熱中して、題名にカタカナが交じっていると「やさしい本じゃないか」と見当をつけて手に取りました。岩波文庫の金田鬼一訳『グリム童話集』のおかげです。これが面白かった。
金田さんは日本にグリム童話を紹介したドイツ文学者で、訳したグリム童話は一種の研究本。1つのお話でも、3つくらいのタイプが載っています。特に語彙が豊富で私は子どもなりにとても感心しました。お話によって、「お母さん」が「お母様」「母ちゃん」「おっかあ」「おっかさん」「おふくろ」といろいろ出てくる。
本は1人きりで、座敷や廊下の隅など邪魔の入らないところで、気が済むまで読んでいました。
料理も「肉汁」の横には「ソップ」、「腸詰め」の横に「ソーセージ」とルビが振ってある。腸詰めなんて当時、食べたことも見たこともありません。おいしそうと想像しながら読みました。
本は1人きりになって読むのが好きでした。座敷や廊下の隅など邪魔の入らないところで、気が済むまで読んでいました。
記憶にある最初の絵本は、幼稚園でもらった『キンダーブック』です。不思議なのは親に読んでもらったおぼえがないこと。自分は最初から1人で読めたと思っています。両親はきちんと読んでくれたはずですが、まったくおぼえていません。いつも1人で自由に絵本の中に入り込んでいました。子どもの記憶は勝手なものです。