子どものころ、父の本棚を探検して面白い本を見つけ、1人きりで読むのが好きでした。読書を通じて語彙を増やし、偶然出会った小説に「女性も働かなくては」と決意。保育士を目指したのも、1冊の本のおかげです。
「賢い女が出てこない」とダメ
名作絵本約100作品を生み出した児童文学作家・中川李枝子さん。「最新刊『ママ、もっと自信をもって』が、お父さんお母さん、保育士、先生たちのお役に立てたら」と語る。
私は5人きょうだいの上から2番目です。姉、私、弟、『ぐりとぐら』の絵を描いた百合子、そしてその下にも妹がいます。私が生まれたころ、父は北海道大学農学部で研究をしていましたが、その後、東京の高円寺にあった蚕糸(さんし)試験場に就職しました。
両親とも読書家で、「くだらない本は読むな」「家にある本はどれを読んでもいい」が口癖でした。自分たちがよいと認めた本以外は子どもに読ませたくないのです。特に母は、センチメンタルな童心主義の童話が大きらいでした。
少女小説も、「賢い女が出てこない」という理由で読ませてもらえません。ですから借りて隠れて読みました。戦争で北海道の祖父母の家に疎開するときは、「くだらない本」を自由に読めると、姉と2人で大喜びしたものです。