産育休者の仕事をカバーした社員に報酬を与える会社
小酒部さやか/増収増益、過去最高の受注を記録している日本レーザー。その経営指針「市場は見ない。人を見る」の真意とは?
「いざとなれば給料全部召し上げて報酬ゼロでいい」。それは役員に必須の覚悟
―― 成長と修行の結果としてリーダーシップの発揮がある、と。
近藤 責任と覚悟を持って成長することです。それに気づくためのきっかけを持つことです。
赤字になりそうであれば、退職金も取らずに個人資産をなげうってでもやればいい。取締役にはよく言っていますが、いざとなったら給料全部召し上げて報酬ゼロになってもいい。その覚悟がなきゃ役員になるなと。覚悟が違うから、逃げずに頑張るわけですよ。
東京電力の役員も、日本航空の役員も給料ゼロにしたと聞いたことがないでしょう。2割くらいカットしたとは聞いたけれど、もともと高いですからね。私達は覚悟が違うんです。
―― そこまで社員のことを思っている社長がいるなんて心底感動しました。


今回お話を伺ったのは……
近藤宣之
日本レーザー
代表取締役
1944年東京生まれ。ドイツ交換留学生として欧州に滞在。慶應義塾大学工学部卒業後、日本電子に入社。日本電子連合労働組合執行委員長、総合企画室次長、取締役米国法人総支配人、取締役営業副担当などを経て、日本レーザー代表取締役に就任。2011年、第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞・中小企業庁長官賞を、12年には「平成23年度新宿区優良企業表彰経営大賞(新宿区長賞)を受賞。 著書に『変化する企業社会とキャリア形成』『成果主義の課題』(いずれも公益財団法人富士社会教育センター)、『ビジネスマンの君に伝えたい40のこと』(あさ出版)などがある。
小酒部さやかの「取材後記」
多忙を極める近藤社長に取材を申し込んだのは昨年の12月末。「3月まで忙しいので、それまでお待ちください」とのことでした。まだかまだかとインタビューを心待ちにしていた私にとって、目の前で情熱を込めてお話しされる近藤社長の言葉は、予想をはるかに超えて力強く優しいものでした。思わず目頭が熱くなることも。
インタビューの後、会社をご案内いただく間も、社員一人ひとりに丁寧に声を掛けていらっしゃいました。そのときの近藤社長のお顔のうれしそうなこと!
「人を、社員を大切にする」
これは社長にとっても、喜びのある、うれしいことなのだなと実感した次第です。
●「マタハラNet」とは?
NPO法人マタニティハラスメント対策ネットワーク(通称:マタハラNet)。2014年7月に設立したマタハラ被害者支援団体。少子高齢化が進み労働人口が減っていくこれからの日本で、育児や介護、病気やけがなど様々な状況の人達が働き続けられる社会の実現のため活動している。http://www.mataharanet.org/
(ライター/水野宏信、撮影/村上 岳)