褒めてあげたいという原動力が「父さんの子育てコミット力」
オーストラリア・ニュージーランド銀行スペシャライズドファイナンス・ジャパン本部長の井上義明さん
阪部 「共働き夫婦なのだから、お父さんだって子育てにせめて50%はコミットしてほしい」というのが多くの母親の意見だと思います。とはいえ、気持ちはあってもリアルに子どもに接する時間をつくるのはなかなか難しいお父さんが多いのが現実です。井上さんのお話を伺っておりますと、お子様達に対峙する時間を意識的につくられているようにお見受けします。
井上義明さん(以下、井上) そうですね。言われてみれば、父親として私のコミット力は高いほうだと思います。もちろんいつも一緒に、というわけではありません。平日は帰宅後、夕飯を済ませ、お風呂に入ってから自室で読書をしたり、文章を書いたりして自分の時間を過ごすことがほとんどです。
それでも長女が小学6年生のときには父親の私がPTA役員をやりましたし、子ども達の進学時期には三者面談に出席し、進路について一緒に考えました。また、子ども達の大学時代には大学の教務課から半年に一度送られてくる成績表に目を通して、成績内容を把握することに労はいといません。さらに運動不足解消を兼ねて週1回、次女と一緒にウオーキングをしています。
―― それはなかなかできないことです。それはお子様達の成長を見届ける親としての責務を果たしたい、というようなお気持ちからなのでしょうか?
井上 その通りです。そして、何より子どもに関わることが楽しいからです。子どもの成績表をチェックしているのは、叱るところを見つけるためではありません。褒めるところを見つけるために見ているのです。例えばある試験が70点だったとすれば、「どこを間違えちゃったんだろうね」と一緒に考える時間が楽しいのです。
―― 見習いたいです。自分の仕事で手いっぱいで余裕がない人にはなかなかできないことです。
井上さんはプロジェクトファイナンスという、言うなれば、30年先のキャッシュフローを大局的に見ていくお仕事をされています。これは職業柄、日ごろ、感じていることなのですが、職種のビジネスサイクルはその方のライフスタイルのリズムと呼応していることが多い。「静かな水面の川底は深い」ではありませんが、悠然と冷静にお子様の成長を見守っているお父さん、という印象です。
井上 いやいや、気持ちのうえでは私だっていつだってアップアップしていますよ。でも、大局的に、という姿勢はおっしゃる通りかもしれない。手を抜けるところは大局的に手を抜いてね(笑)。