パパが器用にハサミを扱う姿に「お父さんスゴい!」と尊敬のまなざし
これまでにも数え切れないほどの簡単にできる手作りおもちゃを考案してきた竹井さん。市販のおもちゃではなく、あえて親子で手作りをしたおもちゃで遊ぶ魅力について、次のように語ります。
「日常的な生活の中で、親は親、子どもは子どもの役割を演じながら生きています。ですから、例えば、パパがパパを演じてばかりだと、なかなか親子の絆は深まりません。深くするためには、親子の関係というよりも、お互いの人間同士のつながりのパイプをどれだけ深くできるのかが大事。そのために必要なのが、“共感体験”なんです」
愛知教育大学教育学部創造科学系教授 竹井史さん。筑波大学大学院人間総合科学研究科後期博士課程芸術専攻満期退学。富山大学人間発達科学部教授等を経て現職。専門は美術教育、幼児教育(造形・遊び)。これまでに、地域住民参加のイベントを15年間企画・運営し、7万人以上の親子と触れ合う
共感体験とは、お互いが共通の目的に向かい、親子で達成感を共有する体験のこと。
「よりたくさんの共感体験をするには、市販のおもちゃよりも手作りおもちゃのほうがいいんです。親子でおもちゃを作りながら、ああでもない、こうでもない、こうしたらいいかもといった意見交換をしながらおもちゃを作っていきます。完成してうまく遊べたときには、親子で達成感が共有できる。そこが大きなポイントとなるのです」と竹井さん。
達成感を共有するためには、最初はお互いにそれぞれ作るのではなく、1つのおもちゃを一緒に作るのがいいと提案します。
「一緒に作ることを、まずは楽しんでいただきたいですね。そして、失敗したり、成功したり、一喜一憂しながら完成したときにお互いの喜びになりますから。一緒に作ることで、共通の経験というものが蓄積されると、人間同士のつながりが深くなり、その結果、親子のパイプがさらに太くなっていくのです」
一緒におもちゃを作ることで、お互いを見直すいいキッカケに。
「パパがハサミを器用に使うと、『お父さんスゴい!』と尊敬してくれます。子どもは子どもで、何か作ったときに『コレ、○○みたいだね!』などと、大人では思い付きもしない面白い世界観の話をしたりする。頭が堅くなってしまった親からすると、『お? なかなかの発想力だな』などと感心することもあるでしょう。お互いのいいところを発見し合って、さらに絆が深まるのです。普段なかなか尊敬してもらえないというパパは、信頼回復のためにぜひ遊んでみてほしいですね。その場合は、本番でいいところを見せられるよう、事前にコッソリと練習しておくことをおすすめします(笑)」
親子のコミュニケーションツールだけでなく、パパの脳活性化にも
今回紹介する手作りおもちゃは、すべて親子で作って、それで終わりというものではないと、竹井さん。 「私が提唱しているのは、作った後に親子で一緒に遊ぶことを想定した“作って遊べるおもちゃ”です。つまり、手作りおもちゃというのは、親子のコミュニケーションツールとして捉えてほしいんです」
作るプロセスだけでなく、遊ぶプロセスにおいても、親子で常にコミュニケーションを図ることが大切。
「一緒に作ったおもちゃでの遊び方というのは、とても自由度が高いものばかりです。遊びのルールを変えてみたり、おもちゃの設計をちょっと変えてみたりしながら、遊ぶ方向性も遊び方そのものも変えることができます。親子で相談しながら、より楽しく面白い遊びを考えてもらいたいですね」
おもちゃ自体はとても単純な構造のモノばかりですから、コレをこうするとこう変わるといった、変化の過程が全部見える遊びになります。また、遊ぶことにより考える力が身に付くとも。「設計を変えてみるといった経験によって、科学的な発想も鍛えられますから、ぜひ、いろんな発想で変化をつけてみてくださいね」
手作りおもちゃで親子で遊ぶことは、パパの創造力のトレーニングにも。
「パパの中には、決められた仕事を毎日黙々とこなしていく業務に携わっている人もいるかと思いますが、そういう人にこそ、どんどん遊んでいただきたいですね。自由度が高く、自分と子どもだけで判断して遊び方を作っていかないといけないというのは、ものすごく脳の活性化につながります。日ごろの仕事でアタマがかたくなりがちなパパにこそ、ぜひ子どもと一緒に遊んでいただきたい。手作りおもちゃで遊ぶことで柔軟な発想ができる力が身に付き、柔軟な発想をする子どもと接することで、アタマの体操ができるんじゃないかと思います」
それでは、アタマの体操にもなり、雨の日の室内遊びにぴったりな手作りおもちゃを5つ紹介していきます。
季節の花の美しさに子どもの目がキラキラ「ペットボトル水中花」
【遊び方】
材料は円筒形のペットボトルだけ。凹凸があると、中がゆがんで見えるので、炭酸飲料などに使われる円筒形のペットボトルを用意する。ペットボトルの中に入れるのは、花びらなどの他に、葉っぱなどの自然のもの。これを入れたらキレイだなと思うものを、親子で自由に探して入れてみよう。
その後、なるべく空気が残らないようにギリギリまでペットボトルの中に水を入れてキャップをするだけ。スノードームのように、水中をふわりふわりと舞う花びらを眺めて、季節の美しさを再発見。
【用意するもの(製作時間の目安:3分)】
円筒型ペットボトル、花びらや自然物、水
【竹井さんのアドバイス】
水を入れたペットボトルに花びらをたくさん入れて、ゆっくりと形を変えていく花の動きを楽しみましょう。子ども達にとって、水は最も身近な素材。水の特性を学びながら、刻一刻と形を変える花が最もキレイに見えるポイントを親子で探すのも楽しいと思います。花は、雨の日にあえて親子で散歩がてら探しに出かけるというのもすてき。「これを入れたらキレイなんじゃない?」などと会話をしながら、雨の日の散歩も楽しみましょう。
梅雨の季節であれば、あじさいがオススメ。花を入れた直後の色鮮やかな感じもいいのですが、花びらに水がちょうどよく染み込んで柔らかくなった1~2日後が一番の見ごろかもしれません。
単純なオモチャながらも、「大人でも楽しく遊べるし、眺めていると癒やされます」と竹井さん
【パパライターの感想】
ちょうど、炭酸飲料の丸いペットボトル(1リットル)が家にありました。娘がベランダで育てているフィエスタグランデという花が咲き終わっていくつか落ちていたので、それを投入。それだけだとちょっと寂しいので、散歩がてら父娘で探していると、更地になっている工事現場に雑草に交って赤と紫の花が咲いていたのでゲット! 早速持ち帰って入れると、ひらひらと花びらが舞う姿に親子で癒やされました。
更地になった工事現場に雑草と共に咲いていた花を発見! 早速投入しました。女の子がいかにもハマりそうな遊び
この遊びが気に入った娘は、早速おばあちゃんの家から紫色のあじさいをもらってきて新作作り(笑)。ペットボトルを上下させて、「あ、今、キレイだった!」「あ、ホントだ」など、親子のコミュニケーションが楽しく展開され、単純ながらも楽しい遊びだと思います。