親育てにも熱心だった
ここは、保育だけではなく親への働きかけ──いわば親育てにも熱心だった。
年に数回、専門家を招いての育児講座が開かれ、無料のうえに保育付き(保育ももちろん無料)。子どもの睡眠やベビーマッサージなどの話を、子どもにじゃまされずじっくり聞ける。さらには、調理師さんが園の人気メニューを教えてくれる料理教室などもあり、そこで習ったレシピはわが家の定番料理になっているほど。
様々なイベントのお手伝いなどでは先輩家庭の父親参加率が高いため、新米パパ達も自然と協力的になるという傾向もあった。
父母会の活動も活発で、全員が役付き(当時)。しかも仕事量は結構多く、最初は「忙しいから子どもを預けているのに、父母会の仕事をさせるなんて!」と腹立たしさも感じたのだが、渋々ながらも先生方と密に関わるきっかけになったし、様々な家庭とママ友の枠を超えて交流できたのは父母会のおかげだ。
父母会で私が3年間担当していたのは転園係。2歳児園だったため、卒園後の転園をスムーズにしてもらうため、そして、A保育園のみならず区全体として保育の質を上げてもらうための陳情書をまとめ、区に働きかけていく係だ。
1年目に陳情書を提出した際、区の担当者と面談していたときのことだ。彼がふと漏らした言葉が忘れられない。「どの園も、A保育園さんのようにきめ細かい保育を目指すべきなんですよね」。そのときは単なるリップサービスだと思っていたが、その後、他の園を見学したり転園したりしたことで、「あれはきっと本心だったんだろう」と確信するようになった。
そういえば、同じクラスで上の子を他園に通わせていたお母さんが「ここは、親の気持ちに寄り添ってくれることでは一番だと思う」と言っていたことがあるが、子どもだけではなく親もひっくるめて面倒見てくれるような懐の深さがあった。先生のみならず園長先生までを呼んでのお花見や飲み会などがクラスごとに頻繁に開かれていて、「家族ぐるみの付き合い」の良さも学ばせてもらった。