息子の誕生を機に腸内細菌に目覚める
日経DUAL編集部 伊藤さんがお菓子作りを始めたのは、息子さんのアレルギーがきっかけだったとか。粉寒天や米粉など息子さんが食べられる食材を組み合わせたんですね。
伊藤ミホさん(以下、敬称略) そうなんです。クッキーやタルト、マドレーヌなどを、小麦・卵・乳・大豆・ナッツなどを使わずに作れてしまうんです。粉寒天を加えると、クッキーはサクサクとした食感が楽しめます。
粉寒天は、実はもう一つ、食物繊維を多く取る工夫でもあるんです。私は腸内細菌にすごく興味がありまして(笑)。大腸の中には細菌が1000種、600兆個くらいあるといわれていて、善玉菌と悪玉菌と日和見菌というのがある。一番数が多いのが日和見菌で、腸内環境が悪くなるとそれが悪玉菌と一緒になって悪さをするらしいです。
まだまだ分からないこともたくさんあるのですが、その一方で腸内環境を整えるとアレルギーが改善していくと考えられています。細菌のバランスを整えて腸内の環境を良くするために、おやつにも食物繊維を取り入れるように心がけています。
―― 腸内細菌に関心を持つようになったきっかけもやはり、お子さんのアレルギーだったのですね。
伊藤 そうですそうです。息子は小さいとき、小麦、卵、乳製品、大豆、ナッツなど食べられないものが本当にたくさんありました。野菜の中でもウリ科のものはダメでしたのでカボチャとかキュウリも食べられませんでした。お米も食べられない時期がありましたから雑穀にしたり。大変でしたけれども、そうしないと子どもが死んじゃう、と思うとね。
―― そこまで重度だったんですか?
伊藤 そうですね。よく救急外来にも行っていました。それでも私の両親はなかなか理解してくれなくて、「あなたが神経質なのよ」「食わず嫌いなんだ」と言われ続けました。あるとき、両親に息子の面倒を見てもらった日の夜、息子が泣きわめいて体をかきむしっていたんです。それで「何をしたの?」と両親を問いただしたら、「パンを食べたそうにしていたから、ほんの少しあげた」ということでした。「何度言ったら分かるの? かわいそうだからといって食べさせるほうがもっとかわいそうなんだから」と言いました。この一件の後、やっと理解してくれ、今では良き理解者です。
―― アレルギーは周囲の協力も必須ですよね。息子さんが大好きなのが、今日作っていただくクッキーですね。
伊藤 息子だけでなく、下の3歳の娘の大好物でもあります。下の子は今ちょうどお手伝いをしたい盛りで、クッキーを作るのもよく手伝ってくれて、半分くらい生地をなくしてくれますが(笑)。
―― 次のページでレシピを掲載します。
不思議と和な色合いで、一見すると和風マカロン。食べるとサクサクでホロホロと口の中で溶けていく。あまり大きい型で抜かないほうが食べやすく、また冷凍するとコリコリの食感が楽しい