「うちは母親がいないからこうなんだ」という思いを抱かせない献立を用意したい
掃除や洗濯は、やり方ぐらいは知っている。最も困ったのが、料理だ。独身時代はラーメン程度は自分で作っていたが、手の込んだ料理といってもせいぜいカレーを作るぐらいのもので、ほとんどやったことがなかった。
だが娘には、「うちは母親がいないからこうなんだ」という思いを抱かせない献立を用意したい。これは自ら好んで子どもを引き取った、責任のようなものである。そこは世の中便利になったもので、レシピはスマホアプリで調べることができる。調理のノウハウは、YouTubeを探せば動画で知ることができる。
毎日夕方には、今日の献立をネットで探す日々が始まった。アジやサンマの下ろし方は、YouTubeの板前さんの解説を見ながら覚えた。2ちゃんねるのお料理掲示板まとめサイトにも、簡単でおいしいレシピがたくさんあることを知った。
正直、毎日毎日晩ごはんを作るのは、心がくじけそうだった。だがここでつらいと思っては、この先十数年も子どもを育てていけない。
「自分は料理が好きなんだ」「もともと何か作ることが大好きなんだ」「きっと料理も好きになるはずなんだ」と自己暗示をかけ続けた。
難しいことではない。調理をしながら「なんで自分がこんなことを…」と感じ始めたら、口に出して「お料理大好き!」と唱えるだけである。そんなことを3週間も続けていたら、不思議なもので本当に料理が好きなような気がしてくる。そして実際に、料理の腕も向上してくる。
たくさんのレシピを見ながらいろんな料理を作ってみると、次第にパターンが見えてくるようになった。下味の付け方や調味料の分量、焼き時間など、一定のパターンがあるのが見えてきた。
「うちは母親がいないからこうなんだ」という思いを娘に抱かせない献立を用意するため、スマホアプリでレシピを検索。料理に前向きに取り組むうちに本当に好きになった