「伝える」と「伝わる」の違いは何か?
話の筋は通っている。説得力のある情報も揃えた。それなのに、「君の話は回りくどいなぁ~」「もう少し具体的な説明がないと分からないよ」「結局、何が言いたいの?」と自分の言いたいことが、相手にうまく伝わらないという経験をしたことはありませんか?
コミュニケーションは、相手があってこそ成り立つものです。ですから、自分の中では論理的な説明になっているからというだけでは、相手に伝わるとは限りません。そのため、前の回でお伝えした「把握力」や「思考力」とはまた違う力が必要になります。それが「伝達力」です。
この力を身に付ければ、あなたの話は相手に伝わるようになります。逆にこの力がなければ、たとえあなたが論理的に考えることができていたとしても、結果的には相手に伝わらないわけで、すなわち「論理力のない人」とされてしまいます。
相手にきちんと伝えるためには、伝わるための「ルール」と「型」を知っておくことです。人に伝わる話し方とは、相手の様子や今置かれている状況を見て、タイミングよく、分かりやすい言葉と長さで話すことです。
また、伝わるコミュニケーションを行うには、伝達の基本の型を知っておくといいでしょう。実際、英語をはじめとする多民族国家の言語には、伝えるための「型」があります。
例えばエッセーなら……
という3つの要素で構成することが徹底されています。このような構成で書かなければ、書き手と共通認識を持っていない読み手には、そのエッセーをどう読んでいいのかが分からないからです。こうした「型」は、様々な民族が共存し合う欧米では当たり前のように浸透していますが、日本人にはまだ馴染みにくいかもしれません。なぜなら、日本は多民族国家ではないので、決められた型で話さなくても、なんとなく分かり合えてしまうところがあるからです。
でも、それは少し前の話。今は日本人のライフスタイルも変わり、価値観が多様になっています。一昔前の村社会であれば、共通の文化があったので、相手の話をなんとなく察することができましたが、今はそうはいきません。ですから、共通認識を持っていない人に伝えるときに使う「型」が必要になるのです。
小川大介さん