そういったものが何もない場合も、諦める必要はありません。着衣のまま背浮きをすることによって、相当長い間、体力を消耗しないで呼吸を確保し、水の中で浮いていることができるからです。

 「背浮き」とは、水難事故に遭った際のサバイバルスイミング法の一つ。着衣のままでも体力を奪われることなく、長時間、口と鼻を水面より上に出して浮いていられる浮き身の方法のこと。「浮いて待て」を合言葉に、スリランカ・インドネシア・マレーシア等の水災害の多い東南アジアでも注目され、昨年、DUAL でも紹介しました。(「溺れた時『助けて』と叫んではダメ。ではどうすれば?」(

 田村さん曰く、「背浮きは、ただ浮いているだけなので体力を消耗することもなく、たとえ、泳げない人でもコツさえつかめば、浮くことができる。また、遠泳などで一休みするときにも有効な技術」とのこと。

 背浮きを覚えておけば、水難事故の際、生存率を上げることができるのです。

「背浮き」のままなら、ずっと浮いていることができます。この背浮きの浮き方を学習し、万が一のときにも背浮き姿勢のまま、救助を待てるようにしましょう
「背浮き」のままなら、ずっと浮いていることができます。この背浮きの浮き方を学習し、万が一のときにも背浮き姿勢のまま、救助を待てるようにしましょう

「背浮き」の練習は、二人一組で

 では、実際に水着または着衣で背浮きを練習してみましょう。なお、着衣のまま水に入ったり、ペットボトルをプール内に持ち込んだりする際は、プール管理者の許可を得てから行ってください。今回の記事でも、特別に許可をとったプールで練習をしています。

 実際に背浮きをする前に、「浮く」という感覚をつかむところから始めます。着衣で靴を履いたままプールに入り、空のペットボトルをおなかに抱えてあおむけで浮いてみました。

 最初は、うまく浮けませんでしたが、ペットボトルの浮力に頼りつつ「顎を上げ、気持ちおへそやおなかを突き出して」「もっと足を広げて」という田村さんの言葉に従って、体の形を整えていくと少しずつ浮き始めてきます。

 体を反らせ形を整えていくと、重心が頭のほうに移動し、脚の部分が浮上してくるのです。

しばらく浮いていると、体が慣れてきて、だんだん力が抜けてきます。すると、自然に身体が安定し、より浮きやすくなっていきます
しばらく浮いていると、体が慣れてきて、だんだん力が抜けてきます。すると、自然に身体が安定し、より浮きやすくなっていきます

 ペットボトルを抱え、支えてもらいながら浮くという感覚をつかんだら、ゆっくりとペットボトルから手を離し背浮きにチャレンジします。

 このときのポイントは、「焦らず、手足を広げ大の字になる」こと。ペットボトルから手を離しても、身体が沈むことはありません。浮いていることを実感しながら、ゆっくりと手を広げていけば、安定した姿勢のまま、浮き続けていることができます。

ペットボトルから手を離し、ヒトデや星型をイメージしながら、手足を広げていきます。リラックスしたまま空を仰ぐ姿勢が、背浮きの基本姿勢となります
ペットボトルから手を離し、ヒトデや星型をイメージしながら、手足を広げていきます。リラックスしたまま空を仰ぐ姿勢が、背浮きの基本姿勢となります