高い給料、安定性を手放し、家族と向き合う時間を選ぶ

 家族と向き合う時間が欲しいと思ったので、退職後は自分で仕事量を調整しやすいフリーランスで働こうと思いました。以前、教育改革実践家の藤原和博さんと話をする機会があり、自分のキャリアの中で3つのテーマを持ち、それを掛け算するように広げていくといい、と言われたのです。私の場合、1つ目は7年間続けた営業職、2つ目は復職後の企画コーディネート職、そして、3つ目を何にしようか考えました。そのときに、いま一番興味がある教育をテーマに自分は頑張っていこう、と決めました。

 もちろん会社を辞めることに迷いがなかったわけではありません。いわゆる大企業に勤めていたので、高い給料、安定性を手放さなければなりません。仕事で出会った仲間と縁が切れてしまうこと、会社にいると得られる最先端の視点が無くなることも不安でした。

 でも、会社の先輩に、「退職したからって人間関係が疎遠になるわけでもないし、いつだって仲間だよ」と言われたのです。逆に、これからは誰と働くかを自分で選ぶことができると考え、迷いが吹っ切れました。

時間的にも精神的にも余裕ができ、子どもが安定

 現在は、キャリアカウンセラーとチ保育関連の資格を生かし、大学生のキャリア支援や子どもの教育など、自治体やNPOと共同して講座を行う仕事を中心に活動しています。

 経済的なものはまだまだ全然追い付いていません。でも、何よりも親も子どもも心が安定しました。娘は継続して保育園に通っていますが、延長保育をすることはなく、以前よりも早くお迎えに行けるようになっています。娘をぎゅっとする時間が増え、モンテッソーリなど学んだことを子育てに生かせるようになりました。

 以前はとにかく時間に追われていましたが、時間的にも精神的にも余裕ができたことが大きいですね。夫が単身赴任で平日はいない分、母親の私が子どもに愛情をかけられるようになったので、子どもの愛情不足が解消されたと思います。

 今後は、営業、企画コーディネート、教育の3つのテーマの幅を広げ、学童や学校など、子どもの居場所を作りたい。その夢に向かって、今は第一歩を踏み出したばかりです。

(取材・文/平野友紀子)