特集第1回で紹介したアンケートでは、「離婚が成立するまでには、多くの場合、当事者間の膨大なエネルギーを要する」というリアルな離婚体験の数々が印象的でした。離婚経験者の8割以上が「離婚への後悔はない」と前を向いている中で、「離婚以外の方法がほかにあったのでは」と離婚への後悔を感じている声もありました。重大な決断をする前には、俯瞰した視点から冷静に自分にとって最良の判断を選択することが大切なポイント。
小杉俊介弁護士と徳原聖雨弁護士は、日ごろから数多くの夫婦間のトラブル解決を親身になってサポートし、相談者の笑顔を取り戻すことに尽力してきた経験から、「離婚を決断する前には、将来を具体的にシミュレーションすることやできるだけ冷静・戦略的に話を進めることが重要」とアドバイス。そこで、これから離婚を考える人が、決断をする前に知っておきたい離婚の基本や誤解されがちな知識について紹介していきます。
【離婚の基本1】離婚届を自治体に提出すれば成立
「結婚が婚姻届を自治体に提出すれば成立するように、法的には離婚届を提出すれば離婚は成立します」と小杉俊介弁護士。窓口で審査されることもないわけです。
法務省の公式サイトで用紙をダウンロードでき、必要事項を記入し、届出人の本籍地または所在地の市役所、区役所または町村役場に提出すれば手続き終了。
【離婚の基本2】協議がダメなら調停、それでもまとまらなければ裁判へ
小杉弁護士によれば、離婚には、大きく分けて2つの流れがあります。
(小杉弁護士の解説をもとに日経DUAL編集部が作成)
小杉俊介弁護士
まず夫婦間の話し合いだけで離婚が成立する「協議離婚」。ただし子どもがいる場合は、協議離婚の際に父母が協議で定めるべき事項として「面会交流」と「養育費の分担」があること、これらの取り決めをするときは子の利益を最も優先して考慮しなければならないことが2011(平成23)年の民法の一部改正で明記されました。
次に話し合いだけでは話がまとまらない場合や話し合いができない場合、家庭裁判所の「調停手続」を利用して離婚する「調停離婚」があります。
調停では離婚後の子どもの親権者を誰にするか、親権者とならない親と子との面会交流をどうするか、養育費、離婚に際しての財産分与や年金分割の割合、慰謝料についてなどの財産に関する問題も一緒に話し合えます。
基本的にはこの2つの流れで離婚手続きが進みます。特に日本では「調停前置」の制度があるため、離婚の裁判(離婚訴訟)をするには原則として調停の手続きを経る必要があります。ただし相手方が行方不明など調停をすることが不可能な場合、最初から裁判できるケースがあります。
また、離婚後の名字については、「妻の氏は自動的に旧姓に戻りますが、子も旧姓に変える場合は、家庭裁判所の手続きにより変更可能です」と小杉弁護士。熟年離婚など、妻が旧姓に戻さずに婚氏を続称したい場合にも、家庭裁判所の手続きが必要になります。
次からは、離婚に関する様々な手続きや誤解、対策について、詳しく見ていきましょう。