そもそも、住宅購入の選択肢って何がありますか?
設計の仕事のかたわら、住まいに関する記事執筆やアドバイスも行っている井上恵子さん。
戸建てとマンション、それぞれにまず、新築と中古があります。そして新築の戸建ての場合は、その中でさらに、できあがった家を買う場合と、いちから家を作っていくという2つの選択肢があります。
基本的にできあがった家、いわば“完成品”を買うスタイルなのが、「建て売り住宅」、または「分譲住宅」といわれます。それに対して、いちから家をデザインして建てる場合は「注文住宅」「自由設計」などといわれます。そのなかで、さらに、ハウスメーカーに頼んで建てる場合と、建築設計事務所や工務店に頼んで建てる場合とで、また若干の違いがあります。端的にいうとハウスメーカーは技術力、建築設計事務所はデザイン性、工務店は地域密着型の距離感の近さが、主な特徴ではないかと思います。
ハウスメーカーに頼んで建てる場合と、建築設計事務所に頼む場合の違いをもう少し解説します。
ハウスメーカーの場合、比較的短い期間で、一定品質のものが建てられるというメリットがあります。また大手各社は、技術開発にも力を入れているので、耐震性や省エネ性能などに関して各社で独自の技術を持っている点も安心感があります。ただ、設計の自由度でいうと、ハウスメーカーの場合、用意されている1つ1つの材に規格があるので、「ここを50センチ出したい」というレベルまでこだわろうとすると、難しい場合もあるかもしれません。
建築設計事務所の場合は、設計の自由度がかなり高いのが特徴です。じっくり細かいところまでこだわって自分だけの家を作りたい場合や、小さな土地に工夫して家を建てたい場合などには向いていると思います。建築士は、例えば「お皿を何枚持っているか」に合わせて、ぴったりの収納を提案してくれたりします。最近は、若い世代を中心に、家で自分の個性を表現したいという人も増えていて、そういう人たちは、建築設計事務所に頼む場合が多いようです。
また、ハウスメーカーは設計と施工が一体になっているのに対して、設計事務所に依頼した場合、施工業者とは完全に別になります。ですから、設計と施工が一体になっている安心感がいい、という人はハウスメーカーが良いでしょう。一方、設計と施工が別になっていると、数社から見積もりをとった上で施工業者を選定できるため、コストダウンにつながる場合があります。
戸建てを建てようという人は、そういった違いを踏まえたうえで、どこに頼むかを決めると良いと思います。