調査票に唯一「フルモード化」というキーワードを明記した会社
ダイバーシティ推進室室長・弥富洋子さん
日経DUALの「共働き子育てしやすい企業ランキング」、初代グランプリとなったサントリーホールディングス。日経DUAL編集部が最も注目したのは「フルモード化」というキーワードだ。会社は育児中社員に対して「制度を利用し柔軟な働き方をすることで、フルタイム勤務ができる」というメッセージを明確に打ち出し、社員側もそれにポジティブに応じていることが分かる。
産育休を取得している社員の復職前には、上司と社員による「復職前面談」が行われ、復職後の働き方や緊急時のサポート体制などを情報共有。復職を申請する際に、上司から人事にその面談内容を報告する。さらに、毎年秋には復職者が必ず参加しなければならない「復職後フォローアップセミナー」を実施。この場で改めて会社からの期待や先輩社員の事例紹介を伝え、参加者同士でグループワークを行い、本人の悩みを解決し、「フルモード化」を推進している。
このセミナーに参加することにより、復職後の働き方にも変化が生じている。2015年のセミナー参加時点では、短時間勤務者が64%、フルタイム(フレックス・時差勤務を含む)が36%だったのに対し、セミナー受講1年後に行ったアンケートでは、短時間勤務が25%、フルタイム(フレックス・時差勤務を含む)が75%という回答が得られた。つまり、フルモード化が順調に進んでいるわけだ。
一般的に、育児中社員がなかなかフルタイム勤務に移行できない理由として、「フルタイム勤務に戻すと、長時間残業を受け入れざるを得なくなり、両立が大変になる」という不安があるといわれている。つまり残業をしなくて済む“保険”のために、時短で勤務をしている人は多い。実際は、フルタイムの勤務時間と大して変わらない働き方をしていても。
特に小さな子どもを抱える社員にとっては、保育園のお迎えやその後の夕食準備、入浴、寝かしつけといった「夜の育児」のために、残業はできるだけ避けたいところだ。
しかし、サントリーでは全社員の残業時間削減に力を入れることで、育児中社員でも心おきなく仕事と育児に邁進できる環境を整えようとしている。その表れの一つがこれだ。メンバーの通常人事考課に「時間生産性」という評価項目を設け、マネジャーは業務計画で部署目標を立案し、評価している。人事評価に時間当たりの生産性という項目を明記しているのは珍しく、先進的だといえる。