問題の答えを書きながら、頭の中では次の計算をしている
そろばんが好きでたまらないというのが伝わってきた、莉子ちゃんと柊ちゃんの実演
原型は4000~5000年前からあったという、習い事の最長老、そろばん。パチパチパチと珠をはじきながら何桁もある数式をものの数秒で計算したり、頭の中にある珠のイメージだけでぱっと暗算したり。実践的かつ周囲を驚かせる“見せ場”の多い、頭脳系習い事の代表です。
今回訪れたのは、東京都練馬区にある南が丘数理学院。加山和男先生は早稲田大学理工学部を卒業した理論派です。先生自身、小学校3年生からそろばんを習い始め、大学時代には3年連続で日本一になったという輝かしい経歴の持ち主。そんな加山先生は、そろばんを習うことで得られる大きなメリットは「処理能力のスピードアップ」と「集中力の強化」の2つだと強調します。
まず、処理能力のスピードアップについて、同教室に通う生徒さんと保護者に話を聞いてみました。
小学校5年生の莉子ちゃんは「学校の宿題が早く終わる」と成果を実感しています。莉子ちゃんのお母さんも「模試のとき、大量にある計算を素早く終えることができるので、他の設問に余裕を持って取り組むことができているようです」と話します。
4年生と1年生の子を通わせている母親の岩見さんも、これに同意します。「“計算する”と“答えを書く”という2つの作業を同時に行えるようになります。問題の答えを書きながら、頭の中では次の問題の計算ができ、時間を有効に使っているみたいです」
その効果は生活全般に及びます。6年生の娘を教室に通わせる堀田さんは、「娘は以前はのんびりして急げない性格だったのに、そろばんのおかげか今は変わりました。日常生活でスピード感が増したように感じています」と話します。2年生の娘を持つ向田さんも、「マイペースだったのが、今は普通のスピードになったと思います」と口をそろえます。
集中力の強化については、堀田さんは「娘は集中力がとてもあるほうだと思います。周りがうるさくても、自分で決めたことをチャッチャッと終わらせられるようになりました」と話します。
実際、取材中に莉子ちゃんと6年生の柊(しゅう)ちゃんに、そろばんと暗算の実演を見せてもらったとき、先生や保護者への取材が続く騒がしい中にもかかわらず、7桁のかけ算や割り算を驚くほどのスピードでこなしていました。
次ページ以降も、生徒の実感、親の実感を伺っていきます。