上位10自治体の評価ポイント

1位 新宿区 (72点)

 子どもの数は増えているが、保育園の数も増やしている。2016年4月時点の認可保育園の全年齢クラスの定員は、前年比で約2割増えており、調査対象自治体のなかでも高い伸び率。東京23区の中では待機児童が少なく、3歳児以上は待機児童がいない。

 保育料は、比較的安い23区の中でも低めに設定されている。特に中間層、低所得層の保育料が抑えられている。

 学童保育は小6まで対応しており、小3までは全員入所できる。19時まで運営している。また現在、小6までの居場所として学童とは別に「放課後こどもひろば」を各小学校内で運営。学童に入っていない児童でも、季節により16時半~18時ころまで、学校内で過ごすことができる。

2位 福生市 (69点)

 保育園・学童保育とも待機児童ゼロ。「転入は少なく、ここ数年は未就学児の数も下落傾向にあるが、現在の2390人を下げ止まりと捉えている」(同市)という。

 2016年4月に一時的に20人ほど待機児童が出そうだった際は、保育園の余裕スペースを利用した「定期利用保育」制度を通常入園と同じ条件で年度内に限り利用できるように改正し、受け入れを拡大。進級時は優先的に市内保育園に入園できるよう調整する。

 保育料も安い。国の基準額の57%を市が公費負担しており、3歳未満は月額4万7000円が上限。また市外の都認証保育所を利用している子どもにも、月額3万8000円を上限に補助をしている。

 病児・病後児保育も小学校6年生まで対応している。利用料金は1日1000円と都内では最も安い。中学生以下の子どもや妊婦がいる家庭が、市内180の協賛店舗で割引やサービスが受けられる「ふっさ子育てまる得カード」などの事業も手掛けている。

 休日や年末の保育、1対1で面倒を見る障害児保育なども手掛けている。

2位 港区 (69点)

 認可園のほか、区が独自に運営している無認可施設「港区保育室」(2016年度の定員1458人)を備える。また認可保育園の保育料は2015年度以降、2人目以降を無料にした。これは全国的にも珍しい取り組み。東京都認証保育所などに通う子どもへの助成も充実しており(最大8万円)、認可保育園に申し込んで入園できなかった場合に、同等の負担額になるよう調整されている。

 区内にある病児保育室はほぼ満員。足りない状況を補うため、病児保育対策にベビーシッターの助成(年間5万円を上限)を今年度から始めた。

 今後10年は、保育需要は増え続けると予測している。再開発する商業施設や大型マンションには保育園の開設を求めているという。

4位 東大和市 (67点)

 保育園の入りやすさ、保育料などが比較的高評価だった。病児・病後児保育関連にも力を入れている。保育園などの保育時間中に園児が体調不良になり、保護者がお迎えに行くことが困難なときに、病児・病後児保育室の保育士が保護者の代わりに保育園までタクシーで迎えに行き、医師の診察後、病児保育室で保護者の仕事が終わるまで預かってくれるサービスもある(交通費も市持ち)。

 また休日保育も今年度から一部保育園で始まった。職業柄、両親とも土日に働く家庭のニーズをくみ取った。学童保育も今年度から延長事業を開始し、19時まで利用することが可能となった。

 「未就学児の数は4500~4600人とほぼ横ばい。大型マンションなどの大規模開発案件もひと段落」(同市)。一方で子どもを保育園に預けて働きたい女性は増えており、保育需要は伸びる見込みだという。保育需要の高まりには、保育園の新設ではなく、園の移転や増床で受け入れ人数を増やして対応する予定。2018年度を保育需要のピークと想定して、待機児童ゼロを目標としている。

 保育士採用への助成も2015年度から実施。保育園が人材派遣会社に払う紹介料の半分(約30万円)を補助している。

5位 浦安市 (66点)

 浦安市は隣接する東京23区の自治体よりも待機児童は少なめ。保育所の全クラス定員数も需要に応じて、約1割増やしている(2016年4月、前年比)。

 学童保育が19時半まで対応していることも高評価だった。これは全自治体のなかでも長い。

 保育士確保への施策も特長だ。私立保育園の保育士・看護師に毎月3万2500円、給与に上乗せ支給。年2回のボーナス時には4万円を上乗せしている。また新たに保育士になる人向けに、保育士修学金の貸し付け制度がある。年間36万円を上限に貸すが、卒業後に市内の私立保育園に5年間勤務すれば返済不要になる。

 子育て支援のうち特長的なものは、理由を問わない無料の一時預かり事業(生後4カ月から就学前まで)。1時間までは無料で、指定された幼稚園内などで子どもを預かってくれる。通院や上の子の学校用事のほか、母親の息抜き目的でも重宝されている。

6位 船橋市 (65点)

 待機児童が増え、2015年4月は全国ワースト2位になったが、その後、急ピッチで施設などを整備。2016年4月の待機児童は減った。2017年4月までには、11カ所の認可保育所を作るなど、さらに893人分の受け皿を確保する。「2015年度と16年度で、合計2000人分の保育の受入枠を増やす計画」(船橋市)という。

 保育士不足が原因の待機児童も出たため、今年4月から私立保育所等の保育士給与上乗せ補助を増額。これまでの月額2万4950円を同3万1980円に引き上げた。

 保育所や幼稚園の情報を網羅、医療機関や公園等の遊び場のデータを掲載した「ふなばし子育てナビゲーション」を発行しているほか、市公共機関におむつ替え・授乳スペースを124カ所設置している。

 認可外保育所に通う家庭に対しては、認可園との差額補助ではなく、保護者が負担している保育料月額の2分の1の額を補助している。(「船橋市認証保育所」は月額3万円、その他は月額2万2000円を限度とする)

7位 北九州市 (64点)

 2011年以降、年度当初の保育所待機児童数は0人。2017年度までに認可保育所5カ所、小規模保育所47カ所を整備予定。「保育所入所児童数は増加傾向」(北九州市)という。

 学童保育では、2008年から「希望する児童は学年問わず受け入れる」方針を掲げている。待機児童はいない。

 乳幼児の授乳やおむつ替えなどができるスペースを提供する「赤ちゃんの駅登録事業」を積極的に進めている。公共施設だけでなく民間施設への協力も取り付けており、登録施設数は2016年8月末現在、公共266、民間148カ所。「外出しやすくなった」という声が届くという。

 深刻な保育士不足への独自対策として、「予備保育士雇用費補助」制度を平成27年度に創設。年度当初に配置基準数を超えて保育士を雇用する民間保育所に、人件費として1保育所2人まで月額19万円を補助している。

8位 葛飾区 (63点)

 保育料が比較的安価なことなどが高評価のポイント。待機児童は2016年4月に大きく減った。区内を4エリアに分け、エリアごとのニーズに沿った形で認可保育所や小規模保育などをバランスよく整備中。

 ランキング内容とは関係ないが、葛飾区は全国的にも珍しい0歳児の保育園予約制度を実施している。2016年4月には57人の枠に159人が申し込んだという。「4月時点で待機児童が出るが、年間を通じてみると受け入れ数の合計に変わりはないので、待機児童が増えるというわけではない」(同市)とのこと。

 学童保育は私立学童と公立学童があり、時間は18時~20時20分までと幅広い。定員設定はない。

8位 荒川区 (63点)

 都認証保育所等を利用している家庭に最大6万円の差額補助をするなど、認可に入れなかった世帯への手厚い支援が目立った。

 区の方針として、可能な限り園庭がある保育園を確保していくため、2017年4月に国家戦略特区制度を活用して都立汐入公園内に保育園を開設予定。2018年には税務署の敷地の一部を活用して保育園を誘致する計画。

 学童の対象は小6までで、全25カ所のうち10カ所で対応。今年から全施設で19時まで運営時間を延ばした。保育園と同様、都立公園内に学童クラブを新設する計画もある。

8位 千代田区 (63点)

 千代田区は「待機児童が最も少ない」自治体として話題になったが、マンションの新築などで保育需要は増えており、2019年ころをピークと予測している。直近では2017年4月までに、認可園の新設などで前年比250人分の枠を確保し、待機児童が出ないようにする計画。

 認可保育園の保育料は抑えられている。また東京都認証保育所に通っている子どもへの助成額も手厚く、認可園に通うよりも2割安くなる。

 学童は小6まで対応しており、待機児童はいない。すべて19時まで開所している。中でも「保育園と併設の3カ所は、夜間延長で21時まで預かっており、遅くまで働く親へのメリットが大きい。」(同区)という。保育園では、保育士の確保のため、保育士の子どもの入園優先順位を上げるなどして対応している。

【DUALオリジナルランキングの指標・配点内容詳細】

回答に基づき以下の25項目で配点。100点満点でランキング化した。
①認可保育所など自治体が管理している保育施設の0歳児クラス入所者数と0歳児クラス申請数の比較(8点) ②①で低評価でも1歳児クラスで枠が増えていれば加点(2点) ③2016年の全クラス定員÷未就学児の人数(5点) ④2015年の全クラス定員と2016年の全クラス定員の比較(4点) ⑤認可外保育所の充実度(4点) ⑥ファミサポのサービスを提供する会員の人数÷サービスを受けたい会員の人数(4点) ⑦運営する病児・病後児保育施設の有無⑧病児・病後児保育の最大収容人数と保育所定員の比較(計6点) ⑨病児保育施設以外のサービス(3点) ⑩保育料の上限額(3歳未満)(8点) ⑪中間層の保育料(3歳未満)(8点) ⑫認可外施設に通う家庭への助成制度の有無⑬最大助成額(計9点) ⑭未就学児がいる世帯へのサービスや現物支給の有無や数⑮その具体的な内容(計8点) ⑯学童保育の受け入れ学年⑰小6まで受け入れ可能になるのはいつか(計5点) ⑱学童保育に小3まで全員入れるか(4点) ⑲学童保育の定員を増やす予定(2点) ⑳学童保育の運営時間(7点) ㉑母親の再就職を支援する制度はあるか㉒その内容(合計6点) ㉓保育士の待遇改善への取り組みがあるか㉔その内容(合計6点) ㉕未就学児の人数(調整点として3点) 

(注/各都市の回答や配点結果は記事中に掲載しているもののみ公開し、それ以外の内容については非公開とします)