美容院に併設されている小さなサロンで、白い箱に出会った
抗がん剤治療が始まると、頭髪が抜けてしまうと言われました。当時、私は腰くらいまであるロングヘアでした。頭髪が無くなってしまうなんて、イメージさえできません。
とにかく嫌で逃げ出したい気持ちでしたが、仕方ありません。覚悟を決めた私は、長いまま脱毛が始まると大変なので、短くカットすることにしました。人によっては、抜ける髪が少なくて済むようにショートヘアや坊主頭にしてしまう人もいますが、私はせっかくなので、これまでにしたことのない髪形にしようと思い、娘達と同じ、耳の下くらいのボブヘアにしました。
左/散髪前はロングヘアでした。右/2人の娘達とおそろいのボブに。中央が私です
髪を切ったら、今度は脱毛後のウィッグ探しです。病院でパンフレットをもらったり、インターネットで検索したりして調べました。
ウィッグといっても、おしゃれで使うウィッグと医療用ウィッグは分かれていました。頭皮に触れる部分の作り方が違うのです。毛髪も人毛(人の髪)100%のフルオーダーで作る高価なものから、人工毛とミックスされているお手ごろな価格のものなど様々で、髪形もたくさん種類がありました。これは実際に触れかぶってみないと決められないと思い、いくつかのウィッグメーカーを巡っていたときに、出会いがありました。
そのお店は、ウィッグメーカーではなく、美容院にウィッグ部門が併設しているような小さなサロンで、美容師さんと髪形など打ち合わせしながら選べるアットホームなお店でした。店内に展示してある様々なウィッグを見ていると、白い箱がありました。
子供達のためにわたしたちができること
それは募金箱でした。カットした髪の毛を、子どもにあげる……小児がんや頭髪に悩みを持つ子どもに無償でウィッグをプレゼントする活動。箱にはそんなことが書いてありました。