ものすごい衝撃を受けました。お店の方に尋ねると、美容院で切った髪の毛を団体に寄付してウィッグを作り、子どもに無償でプレゼントする団体があることや、ウィッグが必要なのに買えない子どもが日本中にたくさんいることなどを、小学生の子どもを持つその美容師さんはとても詳しく教えてくれました。

 行きつけの美容院で髪を切ってから5日が過ぎていました。慌てて電話しましたが、切った髪はその日に処分してしまったと言われ、心からがっかりしました。

子ども用ウィッグは高価。需要の高さにかかわらず行き届いていない

 ヘアドネーション。ベッキーさんや柴咲コウさんなど、芸能人がカットした髪の毛を美容院に送ってへアドネーションしたことが報道され、乳がんの治療中の小林麻央さんのブログなどでも話題になり、その名称は広まってきていますが、皆さんはご存じでしょうか?

 今回、ヘアドネーションに関わる特定非営利活動法人「Japan Hair Donation & Charity(ジャパン ヘア ドネーション アンド チャリティー、以下、通称「JHDAC、ジャーダック」)」という団体(事務局は大阪)と、「ドニー」と呼ばれる、ウィッグを受け取る家族を取材しました。お話を伺ったのは、JHDAC事務局長の渡辺貴一氏です。

 JHDACは2009年9月1日に法人設立され、今年8年目を迎えました。へアドネーションを始めたきっかけは、美容師である渡辺氏とパートナーの3人が新しい美容室を立ち上げるときに、何か一般の美容サービスだけでなく、自分達の技能を生かし“社会貢献”ができないか考えたことが始まりでした。そして、毎日産業廃棄物として処理される髪の毛で、何か役立つことはないかと考え、髪の毛を寄付しウィッグを作り、子どもへ贈るへアドネーションを思いついたそうです。

 思いついたけれど、具体的にどうしたらいいか分からない。アメリカのへアドネーションを参考にしながら、ウィッグ市場のリサーチから始めると、圧倒的に子どものウィッグが足りていないことに気が付きました。

 子どもの頭は小さいため、既製品のサイズでは合わないのです。成長とともにサイズが変わるので何度も制作が必要なのに、フルオーダー制作で高価となり、手に入らずに困っている子どもがたくさんいることが分かってきました。また、ウィッグメーカーも独自に子ども向けの活動をしているものの、年齢制限があり、一番人目を気にする年代にウィッグが行き届いていないことも分かり、プレゼントする年齢を18歳までとしたそうです。