音楽は魅力的で人生を豊かにする。早い段階でこの世界を経験してほしい
日経DUAL編集部 このたび、この絵本を作ろうと思われたきっかけを教えてください。
佐渡裕さん(以下、佐渡) 音楽は非常に魅力的で人生を豊かにするものです。「こんなに素敵な世界があるんだよ」ということを子ども達に知ってもらいたい。そして、できるだけ早い段階でその経験をしてほしいという思いがありました。
そうはいっても、その出合いも縁ですよね。例えば、「皆がピアノを習っているから、あなたも習ったほうがいいよ」と言われて子どもをピアノ教室に通わせ始めたとしても、そこでいいピアノの先生に出会えるか、いい曲に出合えるかは誰にも分からない。
オーケストラはみんなが一つになって最高の音楽をつくります。音をつくりあげる最高の共同体です。コンサートホールに入る瞬間は、まるで音の神殿に入っていくような喜びがあります。そこに行くにはちょっと距離があったりしますが、基本的に、子どもでも小学校に上がる年になればオーケストラのコンサート会場に入ることが許されます(場合によって例外はあります)。まず、そのことを知ってほしいと思いました。
私の娘が小学校1年生になったタイミングで演奏会デビューをしたとき、彼女自身、とても晴れがましい様子でワクワクしていました。親としても「せっかくの晴れの日を祝ってあげたい。素敵な一日になるように演出してあげたい」と思ったことを覚えています。そして、これから小学生になる子ども達や、小学生だけどまだコンサートに行ったことのない子ども達にも、その喜びを体験してもらいたいと思いました。
コンサートホールは音楽を鑑賞するための場であり、いろんな人と時間を共にしなければいけない場所です。その意味でルールを守ることは必要ですし、そのことも親は伝えなければなりません。ですが、まずはとにかく扉を開いて演奏会に来てほしいという思いをこの絵本にこめました。
―― 親として子どもに教えなければならない最低限のルールやマナーにはどのようなことがあるのでしょう?
佐渡 裕さん