今でも家に一人でいると落ち着きません(笑)
仕事に復帰した後は、会社を一歩出た瞬間から「どれだけ早く保育園にお迎えに行けるか」ということばかり考えていました。郊外に住んでいるので通勤に片道1時間半かかるのですが、「何両目に乗れば早く降りられる」とか。自転車での送り迎えだったので「こっちの信号は長いから向こうの道を通る!」というふうに、毎日イメトレの連続。
子どもが少し大きくなってからは、ラジオの録音や朗読を聞くなど勉強の時間に当てていました。今は焦って帰る必要もなく、長い通勤時間はいろんなことを考えられる貴重な時間です。
これもちょっと日経DUALでは言いづらいんですが……。
子どものためにも自分の時間を少しでも持ったほうがいい、という話を聞きます。もちろん、この意見には賛成です。ただ、当時の私は仕事以外の時間は全部子どものために使いたいと思っていました。テレビ局員なのに、たとえ30分でもテレビをじっくり見られなかったし、家でのんびりするなんてこともできなくて……。これ、完全にしゅうとめっぽい発言ですね。「自分の時間なんてなかったわ!」みたいな(笑)。
でもそういう根性論ではなくて、子どもが近くにいるのに、放っておけない性格だったんです。仕事から急いで帰ってきて、夕飯!お風呂!家事!一通り落ち着いたら、そのあとたっぷり子どもと遊ぶ。疲れ切って布団に入ったと思ったら、あっという間に朝になっているという感じです。化粧も落とさないままで絵本の読み聞かせをして、そのまま寝落ちしてしまったことも何度もありましたし、前の晩に子どもと一緒に家じゅうにまき散らした紙吹雪を、翌朝改めて眺めて途方に暮れたこともありました。本当に、あのころは息つく暇もない毎日だったような気がします。
今では娘も息子も大学生と高校生。日曜日に私一人が家で過ごすという、今までは想像もできなかった時間が生まれました。子ども達も身の回りのことはほとんど自分でできるので、私がすべき家事もたまっていない。じゃあ、映画でも見ようかと思ってソファに座っても、なんだか落ち着かないんです。何かやることがないか、つい探してしまって、30分も座っていられないんですよ(笑)。日曜日をまるまる子どものために使っていたあのころは、こんなふうにのんびり過ごせるなんて考えることもできなかったですね。今思い出すと、とても懐かしい気持ちになります。
毎日楽しかったけれど、やっぱり少し疲れていたあのときの自分に、「子育てにバタバタする日々にも終わりがあって、それは思っているよりも割と早く来るよ。子どもってすぐに大きくなっちゃうよ」って教えてあげたいです。あっ、またしゅうとめ感、出してしまいましたね(笑)。
(取材・構成/樋口可奈子 写真/鈴木愛子)