WAAの目的は長時間労働問題の解決ではない
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス代表取締役・北島敬之氏
WAAの説明会は、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス代表取締役・北島敬之氏の次のような言葉で始まった。
「当社が導入した新たな人事制度『WAA』は、長時間労働を無くすといった問題解決のために生み出されたものではありません」
「この制度のスタートラインは、私たちの本来あるべき姿とは何かということでした。『環境負荷を減らし、社会に貢献しながら成長する』というビジョンを実現するための組織づくりの一環ではありますが、従来の人事制度とはアプローチの仕方が大きく異なります」
さらに、「WAAは自社だけで独占するものではない」とも述べた。
「今日のセミナーでお話したことを会社にお持ち帰りいただいて、どんどんシェアしていただきたい。WAAを通じて世の中全体をより良くしていくことが私たちの目的です」
続いて登壇した同社取締役・人事総務本部長の島田由香氏は、北島氏の話を受ける形で口火を切った。
「WAAは自社の問題解決のためではなく、日本を変えるために始めたことです。この説明会の後は、皆さんの立場で、皆さんの環境でそれぞれにできることを考えていただき、実行していただきたい。また私たちもそれに協力したい。国の政策を待つのではなく、『TEAM WAA!』(※)として、企業から一緒に日本を変えていきましょう」
スタートは「どんな暮らしをしたいか」「何を成し遂げたいのか」というビジョン
北島氏と島田氏が口をそろえる「問題解決に端を発しない制度づくり」とはどういうことなのだろうか。
「日本人は問題解決が非常に得意です。ところが、問題解決に固執するあまり『で、何するの?』という部分が弱い。元から持っている強みに、ビジョンに向かって行動する力が加わってこそ、実態を変えることができると思うんですね。そこで、WAAでは、どんな暮らしをしたいか、何を成し遂げたいのかといったビジョンからスタートしました」(島田氏)
ここで、島田氏をはじめとする経営陣、およびマネジメント層が掲げる、新しい働き方のビジョンを挙げておこう。
働き方のビジョンは、社員一人ひとりの「働きがい」に直結するものだ。そして、その「働きがい」を社員に提供するために組織ができることは「環境づくり」と「選択肢の提供」である。その方法の一つとして生まれたのが「働く場所と時間の制約をなくす」WAAだったというわけだ。
結婚、出産、介護など、人が自らの働き方を見直す機会は折々に訪れる。ときには予想だにしないライフステージの変化もあるだろう。どんな変化があろうとも、社員には豊かに働き続けてもらいたいと島田氏は話す。