栄養や見た目だけではなくどんなメッセージを伝えたいか
小竹貴子さん(以下、敬称略): 子どもが苦手な献立を入れるときはなんておっしゃっていますか?
横尾暁子さん(以下、敬称略): なぜそれを食べてほしいのか、渡すときに一言添えるようにしています。「風邪を引かない元気な体になってほしいから、ひじきを入れてあるよ」というふうに。そうすると、「わかった」と言って、食べて帰ってくることが多いです。気持ちを伝えるというのが大事だと思います。
小竹: お弁当を通じてそういうやり取りができていると、一緒に食卓を囲める時間が少なかったとしても濃いコミュニケーションができるような気がしますね。
横尾: 「食育」という言葉が出始めたころ、「親子で一緒に食べるのがいい」と当然のように言われることにどこか違和感を覚えたんです。一緒でなければいけない理由は何か、一緒に食べなくてもできる食育はあるのではないかという疑問が出発点になっています。
小竹: 共に過ごす時間を長く持つことが食育の重要なメッセージではないと。親子で重ねるべき時間は量ではなく質だというメッセージは、とても励みになります。
横尾: 単に共に時間を過ごせばいいのではなく、子どもにどういうメッセージを伝えて、子どもからもどういうメッセージを受け取っていくのかが大事なのだと思います。おいしくて手の込んだ料理を作ることが目的ではなくて、そこに込めた親の思いを分かりやすく伝えていく。それこそが食育の意味なのだと私は思っています。
田園調布学園大学子ども未来学部講師の横尾暁子さん(左)とクックパッド ブランディング・広報担当VPの小竹貴子さん