「皆にありがとうって言われるお母さんはカッコイイ」に勇気づけられる

 専業ママの生活は充実していたのですが、退職後、数年が経つと、また保育の仕事に関わりたくなりました。

 そこで、ママたちが子ども連れで集まれる場所としての「ぷち保育園」を月に数回、地域の公共施設の一室を借りてスタートしました。勤める保育園では実現できなかった「こういう保育があればいいな・こういうお話を聞かせてくれる先生がいたらうれしいな」ということを、まずは小さな一歩ですが、ママたちに提供していこうと思ったのです。

 「ぷち保育園」は、特定の「ママ友」がいなくても一人で参加できる場所があるといいな、という思いからスタートしました。1年かけて親子に寄り添い、本やネットには書いていない、その人、その子へのアドバイスができる存在になることを目指しました。ちまたにはたくさんの育児法があります。「ベビーマッサージ」「ベビーサイン」「早期教育」「英会話」など、「するといい」とされることもたくさんあり、お母さんたちは、何をするのが正解なのか、いつも悩んでいました。それらの方法は子育ての引き出しの一つであり、親子が楽しく過ごすための道具の一つであること、一番大切なのは、お母さんが自分のこと、わが子のことを愛して、受け入れられることだよ、と伝えていきました。

 例えば5月は手形・足形を使ったこいのぼりの制作、調理室を使ってのお弁当作り、6月は雨が多いのでお部屋遊びの紹介やベビーマッサージ体験…など、毎月、色々な取り組みをしました。

 長女は5歳だったので、「ぷち保育園」に一緒に連れていき、手伝ってもらいました。ぷち保育園は好評で、いつも十数組の母子が集ってくれて、数年間も続きました。施設のクローズに伴い、泣く泣く終了させることになったのですが…。

 この小さな取り組みをしている間、私たち親子にとってもうれしい変化があったんです。長女が8歳になったころ、「働いているママのほうが好き。みんなにありがとう、ありがとうって言われる仕事してるの、カッコイイなぁ。お母さんみたいになりたいから、マネしてるんだ」と、私の仕事を応援してくれるようになったのです。自ら家の手伝いをしてくれたり、家に帰ったら「おつかれさま」の手紙が置かれていたり…。一生懸命やっていることを、ちゃんと見てくれている人が家族にいるんだなって、うれしかったですね。

 この応援をきっかけに、自分の仕事にさらに思いを込めてやるようになりました。ちなみに、2歳下の次女はキャラの違いかそんな反応は何もなかったです(笑)。