部下を育てる・叱るは、子育てに通じる
羽生編集長(以下、――) 女性管理職ならではの、部下を叱るときに気をつけなければいけないことはありますか?
坂東眞理子学長(以下、坂東) 「ちょっとひと呼吸おく」ということです。私は自分をコントロールするというのは、女性がリーダーとして生きていくうえで、とても重要だと思いますね。叱るときも、本当に腹が立って怒り狂っているときは叱ることはできないのよね。その怒りがちょっとおさまったときに叱ったほうがずっと効果的です。
―― 叱るときには厳しく、でしょうか。
坂東 感情的にならずに、冷静に厳しく、です。
―― 本当に育児みたいですね。
坂東 育児だと相手は子どもですからその場で怒らないとだめなときもあります。でも部下は大人ですから、3日経ってから怒ったほうがいいですよ。他人だし、「親しき仲にも礼儀あり」ということです。
―― 叱る場所も配慮が必要でしょうか?
坂東 人前は避けたほうがいいですね。褒めるときは人が見ているところで褒めたほうが効果があるけれど。叱るときは相手のメンツを考えて1対1のほうがいい。できれば口頭で、直接叱る。ネガティブな話は文章やメールのように読み返すような形で残さないほうがいいと思うの。それでもちゃんと伝わるんですよね。そういうちょっとしたことは、積み重ねるとその職場の雰囲気に影響します。
枝葉、幹、根っこ 重要度と自分の得意分野で仕分けてメリハリをつける
―― 女性管理職の部下育成ポイントはありますか?
坂東 女性は割と、細かいことにこだわりが強い人が多いんですよね。枝葉の部分なのか、幹の部分なのか、根っこの部分なのか。重要度を考えて、枝葉の部分は自分の思う通りでなくてもよくて、部下にお任せというのもある。だけど幹や根っこのところはしっかり理解してもらわないといけないから、そこについてはちゃんと自分の考えを色々な折に触れて伝えたほうがいいですね。
―― 日常業務の中で確認したり修正したり。どこまでするかというのは管理職としての慣れやテクニックも必要ですね。
坂東 そうなんです。枝葉の部分で言うと、例えば私は文書でも、「てにをは」や一行空けなど、そういう形式的なことは得意ではなかったので、そちらはそういうのが大好きな課長補佐に任せていました。私はビジョンや最後の結論のところがきっちりとなっているか、そういうポイントを指摘するほうが得意だったのでそれを担当する。不得意なところは、だれか得意な部下に任せたほうがいいんです。それからこれは、誤解を受ける例かもしれないのだけれど……資料などの文章を、自分から上にあげたものは部長に直されたりするでしょ。課長は最終的に決定しないというときには、できるだけ部下に書かせて「あなたの意見で部長にぶつけてみましょう!」といって、上に訂正させるという方法もあるのよ。
―― なるほど!それは管理職にとっては時短になるうえ、部下の育成や達成感にもつながりますね。
坂東 そうなの。部長に渡すために、80%の出来の部下の文章がきた。それを自分も一生懸命丁寧に直して99%にしたといってもやっぱり部長に直されるのよね(笑)。だったらね、部下には「こうしたらもっといいんじゃないの? でもね、部長にも部長の考えがあるから、まずあなたの案でぶつけてみようね」って。
昭和女子大学総長・坂東眞理子さん(左)、DUAL編集長・羽生祥子(右)