『ホタルノヒカリ』の原点
日経DUAL編集部 漫画家の仕事というと、アシスタントさんたちと一緒に夜中まで原稿を描いて、徹夜も当たり前で、というイメージがあります。実際そうなのでしょうか。
ひうらさとるさん(以下、敬称略) 30代前半まではまさにそんな生活でしたよ。10代のときに少女漫画誌『なかよし』でデビューして、10年くらいは毎月32ページをコンスタントに描く感じでしたが、27歳でフリーになってからは連載をかけ持ちするように。最高で月に160ページくらい量産したこともありました。3LDKのマンションに7~8人のアシスタントが入れ代わり立ち代わり来て、私は自分で人物を描きながら、背景や小物などはこう描いてと指示を出すんです。いわゆるプレイングマネジャーみたいな感じですね。
そうやって締め切り前は徹夜で仕上げて、原稿を出したらみんなで昼から焼き肉屋さんへ。食べて飲んで、帰ってきて倒れるように寝て、翌日からはまた仕事という感じでした。
―― それはかなりハードな生活ですね。
ひうら 夜中に原稿を上げてからクラブへ踊りに行ったりして、遊びもしっかり楽しんでいました。でもさすがにだんだん疲れてしまって。34歳くらいのときに少し仕事を減らし、同時に住まいも都心のど真ん中から少し落ち着いた住宅街へ引っ越したんです。
近くに住んでいた友達の家が平屋で、そこでネーム(漫画の草稿)を描いていると、塀の上を猫が通ったりするのが窓越しに見えるんですよ。そのの~んびりした感じがいいなあと思ったことが、『ホタルノヒカリ』の原点になりました。
漫画家のひうらさとるさん