中学受験に対する過酷なイメージ。上位校狙いなら分かるけれど・・・
一般的に中学受験は、小学3年生の2月から大手進学塾に通い、そこから3年間かけて中学受験のための勉強をします。塾に通うようになると、宿題がたくさん出るし、授業の復習やテストの対策もしなければならず、長期休みも含め塾中心の毎日を送ることになります。4年生のうちは週2回ほどの塾通いも、6年生になるとほぼ毎日という状態になり、学年が上がるごとにハードになっていくのが、今の中学受験の実情です。
しかし、塾に通えば順調に成績が上がるという保証はなく、むしろ一度は壁にぶち当たり、苦戦する子が多いのも現状。努力が実り、上位校に合格できればいいけれど、中学受験で第一志望校に合格できる子というのは、全体の約3割と言われています。つまり、小学校生活の約半分を受験勉強に費やすにもかかわらず、多くの子が第二志望、第三志望の学校に進学することになるのです。そうした結果から考えると、中学受験のレールに乗るのは「割が合わないのでは?」と思ってしまうのも親心。
にもかかわらず、今もなお首都圏では6人に1人が中学受験をしています。それは、なぜでしょう。中学受験に詳しい安田教育研究所の安田理さんに聞いてみました。
“進学実績”よりも“情操教育”重視。偏差値では測れない私立中高一貫校の魅力
安田さんはこう話します。
安田教育研究所代表の安田理さん
「中学受験というと、大手進学塾で成績順にクラス分けをされ、ひたすら勉強して上位校を目指すというイメージを抱いている親御さんは多いと思います。しかし、ひとくちに中学受験といっても、偏差値70以上の最難関校から偏差値30台の学校までその学力には大きな幅があり、各校の特徴も異なります」
「昨今、中学受験をさせる理由で最も多いのは、私立中高一貫校に通わせると、大学受験に有利であるという考えです。確かに、中高一貫校に行けば、高2の段階で高校課程に必要な勉強をすべて終わらせ、高3の1年間をかけて大学受験のための勉強に充てられるというメリットはあります。そういう考えを持つ家庭は、難関大学を目指すため、中学受験においても上位校を狙います。そのため塾の指導のもとに一生懸命勉強します。しかし、各校には定員があるので、どんなに頑張っても不合格になってしまう子が出てきてしまいます。そういう子は第二志望、第三志望校へと進学していくのです」
「しかし、私立中高一貫校の魅力は上位校に限るわけではありません。また、進学に有利というだけでもありません。依然としてまだ進学実績が重視されていますが、私学の本当の魅力は各校が掲げる教育理念にあります」
「例えばキリスト教の学校では、『困っている人を助ける』『世の中の役に立つ人間になる』『自然の恵みに感謝する』といった宗教思想が、すべての教育の土台になっています。授業で『聖書』の時間があったり、奉仕活動をしたりするなど、公立校や私立でも進学実績だけを追っているような学校にはない独自の教育を行っています」
「昨今、多くの私立中高一貫校が、早朝学習や放課後の補習・講習など、学力向上に力を入れるあまりに、10代の多感な時期に自分のことや将来のことなどについてじっくり考える時間が持てなくなっています。しかし、キリスト教の特にプロテスタントの学校では毎日礼拝があり、そうした時間の中で、自分を見つめることができます。また、学校生活や家庭生活の中でつらいことや苦しいことにぶつかった時に、礼拝や『聖書』の時間で耳にした聖書の中の言葉に救われたり、信じる存在があることで精神面を強く持つことができたりもします。このように宗教校には宗教校の良さがあるのです」
「また、近年は共学校の人気が顕著ですが、私立中高一貫校には、男子校、女子校といった性別分けによる別学があります。別学は性別による特徴を生かした教育を行います。ひと昔前は、女子校といえば“お嬢様学校”というイメージがありましたが、現在は女性の生き方も多様化し、実社会で活躍できる女性の育成に力を入れている学校もあります(共学・別学については、今後の記事で紹介していきます)」