「残業は減らしたいけれど、残業代が大きく減るのはつらい」
メンバーズは2016年度、月平均残業時間を前年比22.1%削減すると同時に、過去最高の上半期業績を達成した。「残業削減と過去最高益」を同時に達成したことから、働き方改革への取り組みなどが大きな注目を集めた。優良な健康経営を実践している法人として、経済産業省と日本健康会議から「健康経営優良法人2017(ホワイト500)」にも選定されている。
そんなメンバーズだが、働き方改革に取り組もうと思った背景には、どんな理由があったのだろうか。
メンバーズ・常務執行役員の高野明彦さん
高野明彦さん(以下、敬称略) 2007年から2期連続で赤字になるなど、やることすべてうまくいかない、という時期がありました。当社はクライアントのウェブサイト構築・運用などが主な業務なのですが「明日までにサイト更新してください」と言われたら、深夜残業・休日出勤は当たり前の状況。社員も心身ともに疲弊して、離職率も2割などに高まりました。これだけ社員が一生懸命働いているのに、業績は上がらない。給与も上げられない。すべてが悪循環でした。
そこで、サービスの取捨選択や強化を進めるとともに、働き方や人事制度を見直しました。それまでウェブエンジニアやデザイナーの業界では一般的だった裁量労働制をやめ、時間管理をすることに。一時、残業代が増えることを覚悟しましたが、おかげで業績回復を果たし、離職率も下がりました。
その後も生産性を高め、残業そのものを減らすべく取り組みを続けてきました。2016年にさらに社員が長期を見通しやすい報酬制度・給与モデルをつくり、多様なキャリア・働き方をサポートするプロジェクトを立ち上げました。生産性向上・残業削減に取り組むにあたって、事前アンケートを行ったところ、特に若い社員などからは『残業は減らしたいけれど、残業代が大きく減るのはつらい』という声があがりました。
そこで、2016年4月と10月に2半期連続でベースアップを実施し、通期で8%、給与を引き上げました。ベースアップは当社のようなITベンチャーでは非常に珍しいことです。残業削減によって減ることになる残業代以上のベースアップをあらかじめ行い、給与を保証する。だから、安心して残業を減らしてほしい、というメッセ―ジを社員に伝えたかった。2018年度末までに、社員の年収を20%上げることが目標です。
背景には、デジタルマーケティングを支えるウェブデザイナー、エンジニア、クリエーターなどへの、世の中のニーズが高まっていることがあります。働きやすい会社にし、しっかりと報酬も支払い、転職などによる離職率をできるだけ少なくしたい。また女性社員、ママ社員も増えているなか、女性管理職比率を30%に引き上げたいという目標も掲げているので、働き方改革は急務でした。
2016年度からの3年間プロジェクトで、残業を50%減らすことが目標です。具体的には、それまで30時間だった平均残業時間を、15時間にする目標を掲げています。