小学校6年間を階段の踊り場で過ごした子ども
『不登校新聞』の編集長石井志昂(いしい・しこう)さんは、「いじめなどで深刻な事態になれば、子どもは親である自分たちに相談してくれるだろうと思う親御さんは多いと思います。でも警察に届け出られた深刻なケースでさえ、相談できていないケースが1割を超えています」と話す。
そもそも小学校高学年になると、いじめのことに限らず親への反発心が強くなったり、相談すること自体にためらいが出てきたりするものだ。さらに問題なのが、いじめを受けている子どもは親や学校の先生に相談するどころか、逆に周囲の大人に追い詰められている可能性もあるということだ。
「もちろん、皆さん普通の先生、普通の親なんです。でも今の学校教育制度では、“学校は全員、行かなければならない場所”になっています」(石井編集長)。すると先生や親はいじめられて休みたいという子どもに対し、勉強が遅れるからとか、強くならなければならないからとか、一度休むと不登校や引きこもりになってしまうかもしれないからと、無理やり登校を促すようにもなる。
「小学校6年間、階段の踊り場で過ごしたという子の話を聞いたことがあります。その子は小学校1年の5月ごろから教室に入れなくなった。本人は学校自体行きたくなかったけれど、お母さんが朝学校まで送り、夕方に迎えに来るために、登校せざるを得なかった。仕方がないから、階段の踊り場で6年間過ごしたというんです。確かにこれなら毎日登校していることにはなる。でも、地獄のような6年間ですよね。そういう状況を黙認する学校の体質にも驚きますが、学校だけに縛られると、子どもにこんなことまでさせてしまうのかとショックでした」(石井編集長)
警察に届け出られた「いじめに絡んだ事件」を見ると、相談しなかったという人が1割以上もいたことが分かる(出典:警察庁発表「平成28年における少年非行、児童虐待及び児童の性的搾取等の状況について」。2013年以降の数値は「いじめ防止対策推進法」に定められたいじめの新定義に基づくもの)