勢いづく共学校。10年前と比べると応募総数は14%増加
安田教育研究所代表の安田理さん
教育コンサルティング会社・エデュケーショナルネットワーク(東京都千代田区)の調べによると、2017年度の中学受験者数は約5万6000人(※小6児童数33万7000人)。その内訳を見ると、前年対比で男子校の応募総数は4%、女子校は7%減少、それに対し共学校は2%増加しています。さらに、10年前と比べると、男子校が28%、女子校が37%減少。共学校は14%も増加しています。
では、今なぜ共学志向の傾向があるのでしょうか? その理由を安田先生はこう説明します。
「かつては、私立中高一貫校の上位校といえば、男子御三家の開成・麻布・武蔵、女子御三家の桜蔭、女子学院、雙葉といったように、男子校・女子校の学校が主流で、共学校の上位校はそれほど多く存在しませんでした。それが、15年くらい前から渋谷幕張、渋谷渋谷、早稲田実業などの共学校が上位校に加わるようになり、上位校を目指す子の選択肢が広がりました」
「また、公立高校でもほとんどの学校が共学となり、世の中の流れとして、『社会に出たら男女一緒に働くのだから、中学・高校も男女一緒のほうがいい』『保育園、小学校と男女一緒だったのだから、それが自然』と考える親が増え、私立中高一貫校においても共学志向が強まっています」
下の表は、近年、男子校、または女子校から共学化した主な私立中高一貫校を挙げたものです。DUAL読者がご存じの男子校・女子校があるのではないでしょうか?
資料提供:安田教育研究所
「共学校に人気が集まると、男子校・女子校の応募者数が当然減ります。男女御三家のような伝統的な上位校であれば、常に人気がありますが、中堅校や偏差値50以下の学校は、ただでさえ少子化が進んでいるのに、応募者数が減っていく一方では死活問題です。そのため、約10年前から徐々に、こうした世の中の流れを受けて共学化が進みました。そして、今もなお多くの男子校・女子校が共学化へと踏み切っているのです」
「さらに拍車をかけているのが、MARCHレベルの大学付属中高一貫校の相次ぐ共学化です。もともとこれらの大学付属校は、大学受験をせずに併設大学へ進学できるという理由で一定の人気がありました。しかし、少子化で大学に入りやすくなっている今、大学側は学生たちの学力レベルの低下を危惧しています。こうした中、早い段階から優秀な子を確保しておきたいという思いがあり、付属校の改革を図っているのです。特に近年は女子の進学率が高まり、優秀な女子を確保したいという動きが出ており、男子校から共学化する付属校が増えています」