絵本とは、何ですか?
赤ちゃんに読み聞かせをする佐々木さん
絵本とは、親子のコミュニケーションツールである――。
今回、保育園児向け「DUAL特選絵本リスト」を選定するにあたり、絵本の専門家2人にお話を聞いた。絵本が子どもの発達に与える影響について詳しい、鳴門教育大学名誉教授の佐々木宏子さんと、絵本情報・通販サイト「絵本ナビ」の代表取締役社長、金柿秀幸さんだ。「絵本とは何ですか?」という問いに対して、このお二人が異口同音に答えたのが、冒頭の言葉だ。
絵本の読み聞かせによって、脳の言語野が刺激されて語彙が豊富になる、道徳や心の教育になる、といった絵本の効用についての話はよく聞かれる。実際、現代は少子化と出版不況という、絵本にとってダブルショックの時代であるにもかかわらず、絵本市場は堅調な成長を見せていると金柿さんは話す。子どもに良い絵本を読ませてあげたいと願う親がそれだけ多い証左といえるだろう。
しかし、お二人は子どもの健やかな成長にとって最も必要なことは、親との良質なコミュニケーション。その手助けのツールとして最適なのが絵本、というのである。佐々木さんは「これ読んであれ読んで、と子どもが絵本を持ってくるときは、本当は絵本を読んでもらうことより、“こっちを向いて”という意味合いのほうが大きいこともある」という。
「読みながら、これは何? あれは何? と子どもが絵を指さして聞いてくることってありますよね? 親からすると絵本をなかなか読み進められなくて、面倒に思うこともあると思いますが、それはコミュニケーションの欲求の表れです。子どもはそれが何か分かっていて聞いているんです。
本心は知りたいのではなく、親と話したいのです。絵本は、子どもにとって親とコミュニケーションをとるための手段の一つなんです」